妖精たちの午後

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「我らもいつか枯れ朽ち星になる。我も何度冬を数え、お前を見送ったことか。お前の終わりは近い。せめて悲しみを忘れ星になって欲しい」 「言葉遊び?」 「星だけにな」 「もっと楽しそうに言ったら?」 「肌が硬いものでな、お前ほど繊細な表情はできない」 「顔は変わらないけど内は悲しみでいっぱいなんじゃない?」 「悲しい。だが、もう慣れてしまった。それになにより次の出会いが楽しみではないか」 「相変らず強いのね」 「鈍感なだけだ」  老いた者たちは再び笑います。アネモネには、そのおもしろさがわかりません。静かな笑いの世界に嫉妬の念がつのります。彼女は気を引こうとして、ジニアの腕に強く抱き付きました。 「ねえオーク、そろそろ星について教えてよ」 「そうだった、無駄話が過ぎた。空の星は我々の魂だ。身体はいつか枯れ朽ち、あるいは溶けて光となる。そして季節の風に運ばれ天へと昇り夜を彩るのだ。まれに星が地に流れ落ちることがある。そのとき魂は地上に戻る」 「別れてもまた会えるんだね」 「どうかしらね」 「名と運命が魂を刻んでいる。思い出は消えるが、再び新たに紡がれる。我はそう信じている」 「でも星が増え続けるのはなぜなのかしら」 「戻る星は少なく、地上から生まれる者が多いのだろう。いつかすべてが夜空に昇る日が来るのかもしれない」 「そのときは皆一緒だね」 「皆いすぎてアネモネのこと、見つけられないかもしれないわ」 「大丈夫だよ、アタシ絶対迎えに行くもん」 「どこで寝てても来るものね」 「アタシの手がジニアに届かないなんて、絶対にないんだから!」  一つの夢を信じ、三人は笑います。生きる者は誰も終わりの後のことを知りません。それはもう「終わっている」からです。でも知ることのできないものは恐ろしくて、なんとか知りたくなるものです。だから当てずっぽうに、こうだったらいいなと思い描き笑うのでした。 「じゃあ、そろそろ行くわ」  アネモネをくっつけたまま、伸びをしてあくびを一つ漏らします。
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