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「アタシ、いっつも気になってたことがあるんだけど、聞いていいかな?」
「歳以外ならいいわ」
「年増なのはわかってるよ。それでね、ジニアはアタシのこと好き?」
「もちろん」
「でもさ、アタシといるとき、別の誰かを想ってるみたいに悲しい顔してるときあるじゃん。それでヒトヨダケとオークに会って思ったんだ、実は前のアタシがいてその子を思い出してるのかなって」
微笑みのない一色に染まった顔でジニアは答えます。
「ごめんなさい、そうよ」
「やっぱりね」
アネモネは自分の両手を枕にし、脚を組むと、視線を空に移しました。その横顔は清々しい笑顔でした。
「なんか妬いちゃうなぁ、そんなに想ってもらえるなんてさ」
「あなたも好きよ。だけれど、魂がもし同じだとしても、あなたははじめて会ったあの子じゃないの」
「もしかして今回はあの子かもって期待した?」
「ええ少し」
「残念っ、アタシじゃありませんでした!」
二ッと無邪気な笑顔を見せます。その目尻には小さく月あかりが宿っています。透き通った輝きに、ジニアはあの子の欠片を見つけました。
「だけど、アタシをあの子じゃないアタシとして愛してくれようとも、してくれたんだよね?」
「いい子だもの」
「いい子なのかな?」
「私を信じられないのかしら」
「アタシのことダマしてた浮気者だもん」
「浮気じゃないわ、一途よ」
「まあアタシだもんねぇ」
「だけど今はあなただけを思うことにするわ」
ジニアがアネモネの手と自分のを絡ませ固く握ります。
「ありがと」
そう言ってジニアに身を寄せます。
二人眺める空でいくつも星が流れていきました。地上のどこかではある魂が、新たな物語を刻み始めているのかもしれません。二人もそれを思いつつ、この時間を噛みしめるのでした。
するりアネモネの指が解けます。
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