Happiness

5/6
前へ
/6ページ
次へ
 今回、僕にはもうひとつの使命があって。  いや、本当はこっちが本命だったんだけれど。  傍に咲いていた蒲公英をひとつ摘んで、君の左耳に飾る。 「ハワイで花を耳に飾る時、右と左では意味が変わるんだって。右なら恋人募集中。左は特定の相手がいます、って」 「ふぅ~ん?」  君はまだ気付かない。  だから精一杯伝えよう。僕のキモチ。 「蒲公英の花言葉は『Happiness』。僕の幸福は亜希の笑顔を見ること、なんだけど。見せてくれるかな、これから毎日」  亜希は少し俯いて、顎に指を充てて思案し、次に口を開いたのはかなり間が空いてからのことだった。 「それって……プロポーズ、だったり、する?」  長考は僕のキモチが伝わらなかったからなのか、それとも……。 「だったら、やり直し」  いきなりダメ出しをされ、面食らう。 「えっ?」 「まったく……女心がわかってないなぁ。プロポーズにタンポポだなんて! 相変わらず、詰めが甘い!」  そこまで言われてようやく気付いた。  確かに。  雑草は……ない、よなぁ……。  ドラマなんかでよくあるプロポーズのシーンを思い出す。  やっぱり、定番は赤い薔薇の花束? ……なんて今頃、気付いても時既に遅し。  さて。どうしよう……。  万策尽きたその時--。 「花言葉は……よかったけどね……」  ぽつんと呟いたその言葉に光が見えた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加