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今回、僕にはもうひとつの使命があって。
いや、本当はこっちが本命だったんだけれど。
傍に咲いていた蒲公英をひとつ摘んで、君の左耳に飾る。
「ハワイで花を耳に飾る時、右と左では意味が変わるんだって。右なら恋人募集中。左は特定の相手がいます、って」
「ふぅ~ん?」
君はまだ気付かない。
だから精一杯伝えよう。僕のキモチ。
「蒲公英の花言葉は『Happiness』。僕の幸福は亜希の笑顔を見ること、なんだけど。見せてくれるかな、これから毎日」
亜希は少し俯いて、顎に指を充てて思案し、次に口を開いたのはかなり間が空いてからのことだった。
「それって……プロポーズ、だったり、する?」
長考は僕のキモチが伝わらなかったからなのか、それとも……。
「だったら、やり直し」
いきなりダメ出しをされ、面食らう。
「えっ?」
「まったく……女心がわかってないなぁ。プロポーズにタンポポだなんて! 相変わらず、詰めが甘い!」
そこまで言われてようやく気付いた。
確かに。
雑草は……ない、よなぁ……。
ドラマなんかでよくあるプロポーズのシーンを思い出す。
やっぱり、定番は赤い薔薇の花束?
……なんて今頃、気付いても時既に遅し。
さて。どうしよう……。
万策尽きたその時--。
「花言葉は……よかったけどね……」
ぽつんと呟いたその言葉に光が見えた。
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