邪魔するなら許さない

7/34

469人が本棚に入れています
本棚に追加
/349ページ
「…いえ、すみません。 好きな芸能人に似てたんで、本人かと思ってびっくりしちゃって」 「え、そんなに!? 誰だろ、なんて人っ?」 「いえもう引退してるし、絶対知らないマイナーな人なんでっ」 とっさについた嘘に突っ込まれ、慌てて誤魔化す。 そう、風人は4年前… 階段から落ちるあたしをかばって、記憶喪失になったのだ。 だから、あたしの事は覚えてない。 それは、すごく切ない事だけど… ほっとする事でもあって。 元気そうな風人に、相変わらずな風人に… そして、ほんとはずっと会いたかった風人を前に… 泣きそうになるのを必死に我慢しながら、なんとか受付を終わらせた。 だけど見送った途端、ぼろりと涙がこぼれる。 「っっ… あーも仕事仕事!」 いつお客様が来るかわからないから、今は泣くわけにはいかない。 パンパン!と両頬に喝を入れて切り替えると、さっそく風人の洗濯物の処理を始めた。 すると。 さっきはそれどころじゃなくて、うわのそらで受け付けたから気付かなかったけど… 「お前もかい!」 Yシャツ11枚に思わず突っ込む。 まったく、風人らしいや… そう思うとまた泣けてくる。 風人と出会ったのは、約6年前… 大学1年の夏休みだった。
/349ページ

最初のコメントを投稿しよう!

469人が本棚に入れています
本棚に追加