創世神話 ~精霊と原初の存在~

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 次に現れたのは、一対(いっつい)の翼を持つ雄飛(ゆうひ)な竜だった。翼を広げれば巨人よりも遥かに大きな竜は虚空を優雅に飛び回り、その大きな翼が陽の光を(さえぎ)ることで大地に大きな影を落としたという。その影は灼熱の世界を冷やし、煮えたぎる水溜りを冷たい水溜りへと変えていった。熱が冷めることで、精霊たちの活動に安定が生まれた。  そして最後に出てきたのは、雄大な巨人や雄飛な竜に比べたら遥かに小さな妖精だった。しかし、彼には巨人や竜にはない雄弁さがあった。  こうして、原初の存在となる三体が突如として現れたのだ。  妖精はその雄弁さを持って、まずはお互いの名を決めた。巨人をミュルン、巨竜をヘイグ、そして妖精自身はイルミナースと名乗った。そして、その雄弁さを声高らかに、ミュルンとヘイグに一つの提案をした。ミュルンがこのまま大地を歩き続けては大地を破壊し尽くしてしまうし、ヘイグが大空にずっといては、世界は冷えきってまた元の凍てつく世界になってしまうという。  そこでイルミナースは、ミュルンの大きな手足で大地を整える提案をし、大小様々な山や大陸を作らせた。そして大きな水溜りも作り変えた。山や大陸を囲うように満遍(まんべん)なく水が世界を満たすようにし、ヘイグにそこに住んでもらうようにしたのだ。ヘイグは喜び勇んでその水溜りに飛び込み、広大な水溜りを空を飛び回るかのように泳いだ。  ヘイグはイルミナースの提案に感謝し、一枚の(うろこ)を渡すと、ミュルンとイルミナースに別れを告げた。彼は海になると言い残し、広大な水溜りに溶けていった。すると、海には小さな小さなきらきらと光る輝きが誕生したのだ。こうしてヘイグは、ただの大きな水溜りを母なる海へと変えたのだった。ミュルンとイルミナースは、この小さな輝きをヘイグの生まれ変わりとした。彼ら小さな輝きが過ごしやすくなるようにと、ミュルンとイルミナースは世界を少しずつ変えていった。
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