創世神話 ~精霊と原初の存在~

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 世界には様々な気候が生まれ、大気が安定すると真っ暗な空は青空となって、太陽は燦燦(さんさん)と輝いた。やがて小さな輝きは幾つもの精魂(せいこん)へと変わり、世界中に散らばって大地に生い茂る緑が生まれた。大地は肥沃(ひよく)の土地となり、母なる海や大地に多くの生き物が生まれた。イルミナースの提案とミュルンの労働は創造となり、精霊たちの活動に調和をもたらしたのだった。  それを見守りながら、次はミュルンがイルミナースに提案をした。彼はイルミナースに自分の髪の毛を一本渡すと一言、世界は丸いのだと告げたという。彼は小さな生き物たちや大地と海を見守りたいと言い残し、両手足を大地に突いた。それらの四肢は天を()くほどの大樹へと変わり、ミュルンの体は大樹を覆う大きな雲へとなっていった。その根は遥か地中で一つとなり、やがてこれらの大樹は陽光を受けて精霊が宿る精霊樹となった。大地心母(だいちしんぼ)の大樹、海神(わたつみ)の大樹、精火(せいか)の大樹、風雲の大樹となり、世界の源流となる四大精霊が誕生した。イルミナースはこの精霊樹を、世界を司る運命樹と名付けたのだった。  運命樹によってより精霊たちも安定し、大地にもたくさんの生命が誕生した世界は、とても光り輝いていたという。しかし、一人残されたイルミナースはとても悲しんだ。彼の提案は結果として、ミュルンやヘイグを失うことになったのだから。いつしかイルミナースは、自分も世界の何かになろうと、そう思うようになった。  世界中の生命を運命樹と共に見守りながら、ふとイルミナースは思った。彼らは休むことなく活動を続けている。彼らにも休息が必要なのではないかと。  こうしてイルミナースは自分が次に何をすべきかを見つけた。ヘイグがいた頃にできた影を作ってやろう。イルミナースはミュルンの言葉を思い出し、世界を昼と夜に分けるため、太陽の周りを回りながらこの世界自体も回るようにしようと。  世界に昼と夜という時間の観念が生まれた。夜の影は世界の半分を優しく包み、世界中に安息を与えた。そして、いつしか新しい精霊も宿りだした。相反しながらも二面性を持つ精霊。それは昼に現れる光の精霊と夜に現れる闇の精霊だ。光は全てのものに躍動(やくどう)を与え、闇は安息を約束したという。
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