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春だというのに真夏みたいに暑くて、まったく風の吹かない日だった。
やる気が出なくて、床に倒れて仰向けになった――ところまでは覚えている。
◆ ◆ ◆
気が付くと、アイツがすぐ横にいた。
綺麗に正座していて、横になった俺の左耳のすぐ側に、アイツの膝が並んでいる。
ゆっくりと首を回す。
アイツと目が合った。
そこで俺は、ハッキリと確認した。
「これ、夢でしたってやつ?」
「そうだよ。夢オチってやつ」
「オチが分かってるなんて、ありがたい夢だな」
大きく伸びをする。
夢の中だというのに、随分と思考がクリアになっていくのが分かる。
「それにしても、久しぶりだな」
「ああ。もう3年は会ってないから」
「そんなにか。ついこの間、会った気でいた」
「それは、俺がしょっちゅう、お前の夢に出てくるからだよ」
「今みたいに?」
「今みたいに」
「納得だわ」
言われて、すぐに思い出す。
そうだ。俺はいつも、夢の中でアイツに会う。
別に、死に別れたわけじゃない。今の時代だ。スマホをちょっといじれば、アイツにはすぐ連絡ができる。
だけど、俺はもう3年も、そうしなかった。
代わりに自分の夢の中に、何度も都合よく、アイツを出演させていることを思い出した。
「お前、まだ俺を頼ろうとしてるのか?」
「別に頼ってねぇよ」
「頼ってるよ。頼りたいんだ。だから夢に出てくるんだ」
「にわか知識で夢分析してんじゃねぇ」
今日のアイツは、随分と挑発してくる。反抗的だ。
まるで……アイツそのもの。
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