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異種間コミュニケーション。
でも。
これが悪意の上でされた事とも思えない。
おそらくだけれど、この魔に近いゼロの場は、或る種のコミュニケーションである可能性だってあるのかも、だ。
光も何も存在しない外の世界にあって、偶然あたしのことを感知したあたしの同類? が、いたとして。
あたしとコミュニケーションを取ろうとして送ってきた信号であると考える方が合理的か。
そもそも思考の種類ですら違うと考えた方が間違い無いだろうに。
猫でもそう。コミュニケーションを取ろうと思えば接してみる以外にないんだし。
AIだってそう。結果としてどんなアクションするかでしかその考えを理解できるわけではないのだし。
ああ、それを言ってしまえば、同じ種類の同じ国の人間同士でさえ、同じ言葉で話していてさえ、完全に理解し合うなんて不可能なのだ。
あたしなんて自分の中のことでさえ全てを理解しては居ないというのに。ね。
だから。
気長に待つことにする。
次のアクションを。
この世界にあたし以外にもあたしのような存在があったと、それがわかっただけでもいいじゃない。
だから。
あたしはここで。外にも少し気を配って。これからを過ごして行かなくちゃ。
「では、よろしいのですね?」
「ええ。浸食していた部分は隔離。それを利用してひとつ世界を生みましょう。ちょっと一風変わった世界になるかもしれませんね」
「魔の割合が少し多くなりそうですけど」
「そんな世界があっても良いのでは? たまにはね?」
「ああ。主様はまだ少し混ざっています?」
「なかなか治りませんよ。なにせ、猫に転生したのですから」
「まさかの猫でしたね。流石にわたくしもそこまでは想定していませんでしたから」
「リンネには苦労をかけましたね」
「いえ。お戻りになってくださっただけで報われました。無理やりにでもと焦っておりましたから……」
「ほんとごめんなさいね。ああ、でも、猫に生まれてみて良かった事もあったんですよ」
わたくしは、そう、リンネに軽くウインクして。
「生きているって、それだけで、すごく嬉しい事だったって実感できたのですから」
そう、微笑むと。
デートリンネはわたくしに見えるように両手を振り。
「主様は特別でしたよ? でも。それでも。よかったですね」
そう、微笑み返してくれました。
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