キャッツアイ。

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キャッツアイ。

 漆黒の闇。  只々黒く、黒い、黒炭の、黒に黒を重ねたその漆黒の世界。  人の暮らす世界の裏側にあるその漆黒の世界にもそこで暮らしている、魔、があった。  その、魔、が暮らす漆黒の魔界。  その魔界の王、魔王であり漆黒の闇の帝王ツアーリと対するは金色の女王、最強の魔法使いであり世界随一の聖女でもある彼女、最強賢者、セリーヌ・マギレイス・ラギレス。  既に力尽きた勇者ノワ、戦士ロウ、ビショップレイチェルは元の空間に送り返した。  そして。  もう既に残り少なくなった魔力の全てをかけ、ツアーリを倒すのみ。 「魔・ギア! 開放!」  ラギレスの瞳が金緑に光り、そのクリソベリルキャッツアイの輝きが漆黒の世界を照らす。  魔・ギア。  魔機神のチカラ、権能を秘めたそのギア。  マナを集中し、その権能を解放し放つはこの世界の断罪。 「エンペラー・エクスプロージョン!」  ラギレスの聖杖より放たれたその高濃度のマナは漆黒の空間を引き裂きながら魔王ツアーリを直撃。  その漆黒を無に変えながら世界を包み、収束した。  そして。  世界の大半を失ったその魔界にただ一人佇むラギレス。  しかし。  その急激な空間の変化は世界の破滅をももたらそうとしていた。 「ダメ。このままじゃ、世界が破れちゃう」  空間に発生する無数の割れ目。  これを塞がないことにはこの世界だけでなく元の世界も壊れてしまう。  魔王を倒すためにほぼ全ての魔力、マナを解き放っていたラギレス。 「これってあたしのせいだしね……。まぁ、しょうがないか。これがあたしの運命だったのかも、ね」  残りの命の火を魔・ギアに注入し、ラギレスはそこに結界を貼った。 「これ、で……。世界は助かる……はず」  ただただまあるくその空間を埋め、裂け目を埋め、そして元世界と魔界を隔てる結界。  いつしかラギレスの肉体は消滅し、そこにはそのマギア・キャッツアイだけが残り。  そして。そのまあるくある結界を形成し、その空間を埋めて行ったのだった。
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