ねこになっちゃった?

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ねこになっちゃった?

 薄暗い場所。  最初に意識を持った時、そこには大きいもふもふがあった。  あたしはその大きいもふもふにすがりつき、お乳をむさぼる。  おおきいもふもふはあったかく。あたしは安心して眠った。  次第に、周りにあたしとおんなじちいさいもふもふがいるのに気がついた。  あたしを入れてちいさいのは全部でいつつ。  おおきいのがおかあさん。ちいさいのはあたしのきょうだい。  うん。  おかあさんのお乳をむさぼり、そしてみんなで丸まって寝る。  しあわせ。  そんな感情が自分の中に湧いてくるのがわかる。  しばらくはそんな感じで。  お乳を飲んでは寝て、飲んでは寝て。  おかあさんが身体を舐めてくれるのが嬉しくて。  そして。  うっすらと周りに光が見えるようになった頃、やっとあたしは自分が何者で、そしてここがどこなのかを理解した。  あたし、江藤遥香。  日本人、だった。  ごくごく普通の人生で、ちょっとだけおはなしが好きで、自分でもおはなし書いたりしてたっけ。  猫が好きでもふもふが好きでそんなお話をいっぱい読んで。  高校を出てから地元のちいさい会社に事務員として就職して、ほんと普通に過ごしてた。  彼氏もいてもうじき結婚かなぁとか期待してたまだ二十代前半。あっさりと流行り病で死んじゃって。  で、次に気がついたときにはファンタジーの世界。  ああ、あたし無敵チートの主人公? そんな感じの異世界転生してて。  実際王国の公爵令嬢だったあたしは国随一の聖女と謳われ、また攻撃魔法にも長けた最強の魔法使いと呼ばれ。  国の危機、世界の危機にその世界を救うために勇者パーティの一員に抜擢され、魔王退治に奔走したのだ。  東に魔王の軍勢が現れたと聞けば東にゆき、南に現れたと聞けば南に、西だと聞いたら西に行く。  そうやって転戦していううちにとある『穴』を見つけてしまう。  その、魔界と繋がる穴を潜ったあたしたちは、そこで魔王と戦い。  結局魔王は倒したけどあたしも命を落とした。  今、これはどうやら3回目の人生。  ううん。これは、人ではないよね。  あたし、ねこになっちゃった?
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