三回目のスリープ。

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三回目のスリープ。

「不安、なのかもしれないね」  ハクアがそう優しく言う。  少しのリハビリの後、あたしはまたカプセルに入ることになった。  健康チェックと心のケア。そのためだけの目覚め。  カプセルに入って眠ることで不具合が起きて将来起きるべき時に起きれないのが嫌だって人の為、こうしてリハビリの機会を設けているわけだけど。 「これで三回目のスリープ。次に起こすのは五百年後かな。その時は僕のこと覚えておいてくれると嬉しいけど」 「ごめんなさい。自信ないかな……」 「まあしょうがないよ。みんなそんな感じだし」 「ごめんね、おやすみ」 「うん。おやすみ。良い夢を」  スリープに入る前にVRの設定だけはすませた。  マシンメア・ハーツの世界。  アバターはランダムで。  五百年の間、何度も何度もその世界の人生をやり直す設定。  元のミーシャには、戻れないかな。  だいたいそんな記録、残って居なかった。  やっぱり、猫生なんて設定、何処にも無かった。  悲しい……。  カプセルに横たわったところで記憶が途切れた。  ☆☆☆ 「ラギ、ラギ、そろそろ朝だぞ」  薄目をあけるとそこにいるのは金色の髪の毛がライオンの立て髪みたいに逆立っている、美男子。  精悍な顔立ちのその青年は……。  ああ、ジルだ。ジル・コニアン。  あたしの相棒。頼れる男性。たぶん、にいさんの次に大事な人。  ん?  あたしって今考えた?  ずっとボクって一人称使ってたのに。  わたしとかあたしとか、恥ずかしくって使えなかったのに。  ボクは、にいさんを助けるために旅をしている。  マザーによって支配されてしまったにいさん。  先日のバベルでの戦いでは結局にいさんはそこには居なかったと言うことしかわからなかったけれど、空に浮かんで見えたあのサイリングをはめられたにいさんの顔が、頭から離れなかった。 「ジル、ごめんね」 「ああ。わかってるよ。というかそんなことは随分前からわかっててついて来たんだ。そんな気にする事じゃないさ」  あてどもない旅。  今のボクに使えるのはこの盾、魔・ギア《ガントレット》 ダーク・シルトガントだけ。  せめてにいさんの持っていたマギア・キャッツアイがあれば、もう少し楽だったろうに。  そう思いつつ立ち上がる。  さあ、今日は次のオアシスまで足を伸ばそうか。  それともマハリのオアシスに行くべきか。  一度マハリとちゃんと話をしておくのもいいかもしれない。  そう思いジルに声をかけた。
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