デートリンネ。

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デートリンネ。

 デートリンネのことは覚えている。  記録と輪廻を司るチカラを分け与えたあたしの眷属。  寂しかったあたしが生み出した子供。  そう。  あたしの内なる世界が生み出した無数の世界。  その世界の記録と魂の輪廻を彼女に託して、あたしはその情景を楽しんでいたのだ。  無限とも言える世界の中で無限に近い人の人生を垣間見て。  それで満足していれば良かったのに。  いつしかそれでは足りなくなった。  そこに、干渉したくなったのだ。  人の持つ物語がまた次の世界を生む。それもまた良くあることではあったのだけれど。  それだけではなくて、あたしが干渉してデートリンネに造らせた世界もあった。  そういえばあの世界はまだ残っているのだろうか?  不完全な世界になってしまったあの世界。  そんなキオク、も。  今でも。  あの子は今でもあそこに居てあたしの帰りを待っているのだろうか?  それとも。  あたしはかぶりをふって、その考えを拭い去る。  ダメ。  考えちゃ、だめだ。  たぶんまだその時じゃ無いのだ、と。  あたしはラギレス。  ミーシャ・ラギレス。  レイアに名付けて貰ったそのミーシャっていう名前。  心に響く、真名、ラギレス。  その二つの名前はやっぱりあたしの中では大事な名前。  捨てたくは無い、そんな名。  戻ろう。  きっと、あたしは今はあの時間あの場所にいるべきだ。  それと。  この今見ている情景が、この事象の果て、が、偽物の風景、VRで見ている夢とはやっぱり考えにくい。  だから。  跳ぼう。あそこへ。もう一度。  もう何度目かの光の壁。あたしはその壁を抜け、向こう側へと跳んだ。
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