会いたかった。

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会いたかった。

 会いたかった。  会いたかったよノワ。  あたし、もう会えないかと思うと悲しくて悲しくて。  事象の果てから戻って来たんだよ。  あなたにあいに。  あたしはノワに会うなり抱きついて。 「会いたかったよ……」  そう、それだけ、呟いた。  ほんとはもっと伝えたかったけど、声にできなくて。  心の中でだけで叫んだのだった。 「どうしたんですか? 今朝別れたばっかりなのに」  そう、ちょっと困惑気味にノワ。  でも抱きついたあたしの身体を優しく両腕で包んでくれた。  ごめんねノワ。  でも。我慢ができなかった。 「しょうがないな。ねえさんは。なんだかすっかり幼くなった気がしますよ?」  そうにっこり微笑む彼。  って、ちがうもん。幼くなったんじゃないもん。あたし、もう会えないかと思ったんだよ? 悲しくて堪らなかったんだから。  そう言いたくて、でも、言葉にできなくて。  ちょっと膨れて見せるのがせいぜいで。 「幼くなんか、ないもん」  そう、呟いた。  まるで猫にするように頭を撫でてくれるノワール。  あたしはその手が離れるのが名残惜しくて、自分からノワの手のひらに頭を擦り付けて。 「相変わらず、ねこみたいな仕草でかわいいですよハルカねえさん」  あたしの耳元でそんな声を漏らすノワ。耳障りのいいその声が響いて。蕩けそうになる。  ああ。だめ。 「ごめん、ノワ。あたし、ちょっとレイアから分離する」  ノワから離れソファーに座ったあたし、両手を前に出して空間を掴み。  そのままあたしの肉体を新規で精製する。  いつものヌイじゃない。  血の通った肉体。あたしの身体。  猫の身体でもない。  ラギレス時代のあたしの身体。  できないわけじゃ、なかった。今までだってそう。  でも。  出来てしまうことが怖かった。  開き直るにはまだ覚悟が足りなかったのだ。  目の前で人の身体が一つ錬成され精製されるその状態を見せて正常な精神でいてくれる人なんていないんじゃないか。  そうも思っていたから。  命って、そんなに軽いものじゃないはずなのに。  あたしには出来てしまう、その事が。  あからさまに知られたくなかったからかもしれないな。そうも思ってる。  でも。  ノワなら。  ノワールならきっとわかってくれる。  そう信じてる。  あたしが本当の意味で信用できる唯一の、男性。  ノワなら。
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