ほんと、ばかなんだから。

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ほんと、ばかなんだから。

「そっか。大変だったね。ねえさん」  え? 「え? 感想それだけ?」  もっとドン引きされるかと思ったのに。 「だって、ねえさんだもの。もともと規格外だと思ってたけどそういう事なら逆に納得だよ」  って、そういう事ならってどういうことよ? 「でも、帰って来てくれてほんと嬉しいよ。そのまま事象の果てにいられたらさすがに僕じゃ辿り着けないし」 「うん。ありがとうねノワ。あたしも嬉しいの。帰ってこれて」  ノワ、そのままあたしの目をじっと見つめて。 「でも気になるのはその『魔・ラスレイズ』だよね。なんでマギア・キャッツアイを持ってたんだろう? ねえさんのはちゃんとある?」 「うん。今はレイアと共用っぽくなっちゃってるんだけどやっぱりちゃんとあたしの中にあるみたい」 「ならどうして……?」 「ラス・レイズってラギ・レイズのお兄さんなんだけど、あの世界の中ではラスがキャッツアイ持ってた事になってたんだよね。ラギはまだマナのコントロールが苦手で落雷一つ放てなかったし」  お話の中ではそうだった。  のちに受け継がれることにはなるんだけど。 「それと。覚えてる? 魔王城での敵。あれが魔・ラスレイズだったとしたら」 「ああ。その可能性高いよね」 「あの時のエクスプロージョン。あれエターナル級だった。あたしと同じ……」 「ねえさんと同じチカラ?」 「うん。少なくともあたしに近いチカラを持ってるって考えた方が良いかも」  うーん、と、考え込むノワール。  あたしは怖いのだ。  自分のこと、じゃない。  あの魔がノワを傷つけたりする事があったらって思うと怖い。 「ねえさんは今度こそ僕が守ります」  ほら。  ノワはこういう。  でもだめ。 「あたしはノワに気をつけてほしくてラスレイズの事話したんだよ? あいつは強いから、気をつけ欲しくって」  あたしはどうなってもいいの。  ノワだけは、ノワだけは絶対にあたしが守るから! 「僕だってねえさんだけは守りたいんです!」  そういうノワ。  もう。  ほんとばかなんだから。 「ありがとうノワ。でも、絶対に無理しないでね。お願い」  唐突に。 「今度こそ逃さないよ、ラギレス」  ドス黒い声。  そんな声が部屋の中に響く。  せめて今夜くらいこのままなにごとも無く過ごせたら。  そう思っていたあたしの願いは叶えられなかった。
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