寝過ごし喫茶店

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寝過ごし喫茶店

「調子はどうですか?」 目の前に座っている見ず知らずの老人が、ポカンとしている私を見て、もう一度声をかけてくる。 「ど、う、で、す、調子は?」 先程よりもゆっくりと、はっきりと。 「はぁ」 2人掛けのテーブルの正面の席で誰の許可も取らず勝手に相席しだした老人に話しかけられて気の抜けた返事をしてしまう。 「調子は如何ですか?」 老人は蓄えている真っ白なヒゲを触りながら3度目の質問をした。 答えるのも面倒だが、何度も無視するのは失礼なので、もう一度同じ質問をされたら自分の今の調子を至って普通に答えよう。 だが老人が再度質問を投げかけてくることはなかった。老人は黙って席を立ち私の目の前からどこかへと消えていった。老人が消えるとだんだんと喫茶店ごと、私の見ている景色がふわふわとぼやけてくる。不思議な感覚…… ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ 私は目を開けた。電車の中はガラガラで乗客は3人しかいない。目的地にしていた駅はすでに通りすぎていたようで、慌ててここがどこなのか確認する。 果たして次は無事に目的地の駅に起きてたどり着くことはできるのだろうか。本日3度目の寝過ごしを経て再び反対方向の電車に乗る。 今度の夢にも老人がでてきたら次こそはちゃんと質問に答えよう。
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