10.逃げる高梨、追う鈴木

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「嫌いだなんて!そんなことないです!」 食い気味に大きな声で言われてちょっと驚いたけど、本心なんだと思ってホッとした。 優しくしてくれてありがとうと“しか”思ってない。 嫌いだなんて“そんなことない”なら、高梨さんは俺のこと……。 「俺のこと、好き?」 頷いたままの顔を覗き込んだ。 「ねぇ、高梨さ…」 前髪で目元は隠れているけど、頬が赤く染まっている。 だからそれ以上声をかけられなかった、可愛くて。 言わせようなんて、ずるい、俺。 俺の事を嫌いじゃないと分かっただけでも、今は幸せだ。 「高梨さん、今日、助けてくれてありがとう」 高梨さんは顔を上げることなく、小さく首を横に振る。 「……もうちょっと寝るわ」 「……あ……はい、お邪魔ですね」 高梨さんは深々と一礼してドアを開けた。 「おやすみ」 次は小さく一礼して、部屋を出て行った。
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