10.逃げる高梨、追う鈴木

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「たくさんの方とお付き合いされてきたのに、私なんて人生一度もお付き合いなんてないし……」 「そんな、たくさんって、数人だよ?ほら、告白されたのも数回だし」 「私なんて人生一度も告白されていません」 「……いや、したじゃん…俺が、2回も」 その言葉に高梨さんはハッとしたように顔を上げた。 顔を真っ赤にして、目は左右に泳いでいる。 「わ、私ごときが……!みんなの王子様に、に、に、2回も……!恐れ多いです……!」 みんなの王子様って。 てか、普通告白されたら喜ぶよね? そういう場面しか俺は知らない。 なのに高梨さんは慌ててるように見えるし、そもそも“信じられない”から抜け出せてない気がする。 高梨さんは“普通”じゃないんだ、だから気になって、他の子にない魅力を感じる。 絞り出すような声、視線が合わない目、何もできず握りしめた掌……俺はこの人を守りたいと思った。 「みんなの王子様じゃなくて、高梨さんだけの騎士になりたいんだけど」 …何言ってんの、俺、恥ず。 ようやく目が合った高梨さんが呟く。 「……恥ずかしくないですか?」
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