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「主人公…?」
「そう、主人公。物語には主人公が必然でしょ?」
あの男子生徒が主人公。そして、俺は彼と関わった。つまり可能性としてあるのは、
「勇も何となく察してくれたと思うけど、俺の知るストーリーの登場人物に勇も入っている。」
矢張りか。そう思ってこの先を聞くのが億劫に感じられた。詰まるところ、俺は何かしら動く必要があり、そして、それには主人公が大いに関係しているという訳である。
「何処まで言っていいかは分からないけれど、その子には絶対気をつけて欲しい。」
急に真顔になってそういうものだから俺はつい息を飲んでしまった。
しかし、それは一瞬で次見た時にはもういつも通りの笑顔を俺に向けていた。
「さ、まだ荷物全部か出てないし、寮行こっか。」
そう態とらしく体を伸ばして立ち上がった。やけに明るい声色もさっき迄の雰囲気を一変させるものだ。
「あぁ。」
驚きはしたものの、突拍子が無いのはいつもの事だろうと、自分に言い聞かせた。素っ気ない返事を返して、柊の後を付いていった。
九渡高校は学生寮がついている。特に部活に熱心な訳でも無い。
平たく理由を述べるならど田舎にあるからである。駅まで徒歩30分しかも、近くにある駅もローカルで、乗り継ぐ回数は自然と増える、何やで、色々大変な訳で、大きめの学生寮が立っている。
窓から見える景色は田んぼと森と点々と見える趣のある家ばかりである。こんな立地だと言うのに、偏差値はそこそこあり、「学生寮があるなら…」という理由で案外倍率は毎回1以上はあるらしい。
公立だから私立よりは値段は優しくそれにいて殆ど人が落ちないが、偏差値は高いと言うまぁ幾つか妥協した人が通うのが九渡高校という訳だ。
因みに九渡高校は男子校だ。学生寮までは徒歩五分という近さであり、俺も迷わず行けそうな距離である。(俺は極度の方向音痴だ。)
偶然か、それとも柊の計らいか、俺と柊はルームメイトとして生活する事となった。
寮の部屋に入ると慣れない匂いがした。幾つかのダンボールが開いたまま部屋の床に置いてあり、幾つかのダンボールは既に折り畳まれていた。
「さて、今日までにこれ片付け終えようか。」
俺が嫌そうな顔でもしてたのだろう。柊は笑顔で凄んできた。
「勇?」
「分かってる。やる。」
「ふふっ…じゃあ、俺はこっち片付けるから、そっちお願い。」
この時、もう俺の頭に真面目な顔をした柊はいなかった。
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