第十四話 お転婆少女

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第十四話 お転婆少女

区切られた窓から一向に変わる様子の無い緑の景色を見ている。田圃と山、そして青い空。こんな景色を見続けて三十分近く経過しただろうか。古くレトロな列車には乗客は数名しか居らず、乗っているのも穏やかな顔をした老人ばかりだ。 「久しぶりだね。」 同じく外を見ていた柊が嬉しそうにそう呟いた。 「そうだな。」 そんな長閑な景色がプツリと切れトンネルに入る。オレンジ色の光のみの世界で、俺は目を瞑った。電車の中では酔ってしまうから、本も読めない。寝入る俺の隣で柊が笑った気がした。 それは御盆にさしかかろうとしていた或朝の事だった。 「勇!実家に一緒に帰らない!?」 興奮気味の柊。片手にはスマートフォン。画面上にはチャットアプリの個人チャットの様子が映っている。 「母さんが何か怪我をして入院しちゃったみたいでさ。よく分からないんだけど、兎に角家が崩壊する前に帰らないとやばいよね。」 呆れ顔でそう言う柊の顔には心配の色も現れており、何だかんだ放っておけないのだなと理解する。 「分かった。久しぶりに千佳子さんにも会いたい。」 「よし、決まり!すぐ準備するから必要な荷物だけ纏めて。」 「…今から行くのか。」 「うん。母さんがいないあの家がどうなっているのか考えるだけでも嫌だからね。」 「……!…う!…………勇!」 ここで覚醒する。気が付くとすっかり景色は変わっており、人の数も三倍ほどになっていた。 「終点。乗り換えるよ。」 そう言って手を引かれて起き上がる。この騒がしい感じも久しぶりだと思った。帰ってきた、そう感じるのが不思議な感じがした。 都会では無いが、住宅街で交通も便利。親子が多いから近くにスーパーがあって、コンビニも多い。見慣れた街並み。小学生くらいの男子達が公園ではしゃいでいるのも、何だか懐かしかった。 「ただいまー。」 「おかえり、早かったね。」 「早かったね、じゃないよ。父さんは?生きてる??」 「それよりも!勇さん!久しぶりです!!会いたかったぁ。」 そうしてこちらに笑顔を向けて来たのは、柊の妹、美愛だった。この子に会うのも本当に久しぶりである。黒髪のストレートが良く似合う彼女の笑顔は柊によく似ている。 「久しぶり、美愛。」 「さ、入って入って!…お兄ちゃん、邪魔しないでよ。」 「いや、邪魔するよ。てか、勇をどこに連れていく気なの?それともまさか、家全部がこの玄関みたいな状態であったりとか、するの?」 「そ、そうに決まってるじゃない、お兄ちゃん。」 分かりやすく目を泳がせる美愛に、柊は呆れ顔で溜息をついた。
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