第十五話 腹黒ナルシスト

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「わ、小野寺軽っ!」 「これ一人でもいけんじゃね?」 「これなら支えるのも楽だな。」 体育祭の練習時間となった体育の授業で早速騎馬戦の練習をする事になった俺は、クラスメイト三人に担がれていた。メンバーは、杉沢と八重田と真田。下でわいのわいのと騒がれているが、気にしないことにする。 漸く下ろしてもらい、一息ついた。 「俺、力あんま無いんだけど…。」 「倒れそうになったら、俺らが支えてやるよ。この三人は背高い方だし、身長もあんま気にすんなよ!」 そう明るく真田がフォローする。 いや、気にしていないんだけれど。因みに騎馬戦に有利なのは、背の高くて力のある人が上になる事だ。(まさ)しく不適任。本当に大丈夫なのだろうかと不安になってくる。 「今からでも、メンバー変えた方がいいんじゃないか?」 「でも、他に担げそうな奴居ないんだよな。柊誘おうかとも思ったけど、もう二種目入ってたし。金井も誘ったけど、ばっさり断られたしな。」 打つ手無し、という事である。 「そういや、本番、シャツ脱ぐらしいぜ?」 「まじか。めっちゃ焼けんじゃん。」 「日焼け気にするとかお前女子かよ笑」 「いや、ヒリヒリすんの嫌いなんだよ。」 「それは俺も嫌だ。」 思わず、そう返すと、杉沢と八重田の目がこちらに向いた。何故か、驚かれている様だった。そう言えば、以前クラスメイトAにも同じ様な反応されたな、と思い返す。 「…確かに小野寺、白いもんな。肌、焼けねぇの?」 「あまり…。どちらかと言うと赤くなって痛くなるだけだな。」 「うわ、きつそ。それだったら、脱がなくてもいいんじゃね?多分、強制じゃないだろうし。」 「先生に聞いてみる。」 「そういや、真田は?」 「何だっけ、あ、リレーの練習行ったらしい。」 「あー。」 という事は、柊も一緒だろうか。柊の種目はどちらも走りがメインだから、柊にとって有利な競技だ。 「そういや、小野寺ってさ、柊とめっちゃ仲良いよな。中学一緒だったとか?」 「いや、小学後半からだ。」 「まじか。幼馴染って奴?すげぇ。」 確かに小学校から高校まで学校が同じな奴なんてほとんど居ないだろう。今まで大して気にしてはいなかったが、柊の存在の貴重さを改めて実感する様だった。 もうやる事が無いと、杉沢、八重田と一緒にグラウンドに来ていた。教師の数が少ない為、体育館には先生が居なかったから、特に行動を咎められることは無かった。 柊が日陰で休んでいるのを見つけて、声を掛ける。 「柊、お疲れ。」 「あれ、勇?と…杉沢君と八重田君?」 「よっ!真田は?」 「今バトン渡しの練習してるよ。」 「ほんとだ。」 そう呟いた八重田の先を見てみると、確かに練習している真田の姿が見えた。 柊がTシャツの胸元をパタパタと動かしながら、ふぅっと息を吐いた。 「水いるか?」 「ありがとう、勇。」 先程、杉沢と八重田が飲み物を買おうと外の自販機に寄り道した時に購入したペットボトルを手渡した。 柊はキャップを開けるとペットボトルを傾け、中身を減らしていく。 「駄目だね。やっぱ、体力落ちちゃってるよ。」 「大丈夫か?」 「うん。これから走れば少しは体力つくかな。」 「そうか。立てるか?」 「うん、ありがとう。」 柊に手を貸して、軽く引っ張る。さすがにそれくらいの力はあると、今取り敢えず弁明しとく。
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