百徳ナイフ

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ナイフ…これが無い百徳ナイフなどタコの入ってないたこ焼き同然だ。 はさみ…グー以外ならだいたいなんでも切れる。 プラスドライバー…大抵のネジとウマが合う。 マイナスドライバー…プラスより使われないので思考までマイナスになってそうだ。 トルクスドライバー…滅多にお目にかかれない星型のネジ穴を回す滅多にお目にかけない奴。 ヤスリ…猫の舌のようにざらざらしている。だからと言って手や顔を擦ると痛い目に遭う。 爪切り…なるべく夜中は使用を避けたい。 缶切り…最近の缶詰めはプルタブつきが多いのですっかりなまくらと化す。 栓抜き…空ける前にキャップをコンコン叩きがち。 コルク抜き…パーティーの主役になるにはこいつを臆せず使うことだ。 シャープペンシル…消しゴムとの相性は◎で鉛筆の奴を敵視している。 消しゴム…シャープペンシルのミスをカバーするたび神経をすり減らしている。 ボールペン…インクが切れると事切れる。 定規…長さを測るだけじゃなく線を真っ直ぐ引け紙も切れおまけに戦争もできる。 分度器…会釈と敬礼と最敬礼の違いを教えてくれる。 コンパス…こいつ無しで綺麗な円を描ける奴はだいたい絵もうまい。 計算尺…こいつを使おうとする奴はだいたい頭がいいので暗算でもいける。 鉛筆削り…鉛筆の他に細く削ったカツオブシも削れる。 カッター…自分の名前をつけて使用すればどんな流れも断ち切れる諸刃と化す。 彫刻刀…平刀、丸刀、三角刀など兄弟が多いが決して掘りあったりはしない。 千枚通し…一度に千枚の紙に穴を空けると豪語するが実際に実行した者は少ない。 ホッチキス…一度くっつけばなかなか離れない、そんなキスはゴメンだ。 穴空けパンチ…どんなに速いパンチも一枚の紙に正確に穴を空けるのは難しい。だがこいつは違う。一枚どころか数十枚の紙を貫通させる最強のパンチを放つモンスターだ。 ミシン目カッター…使うだけで何故かピザが食べたくなる。 メジャー…名前の割に定規の方が使用頻度は高いので長い者には巻かれるしかない。 温度計…屋外で使用する場合は百葉箱を持ち歩く必要がある。 デンタルミラー…隠れてニラ玉を食べても歯医者は全てお見通しだ。 磁石…冷蔵庫に貼りつけたいところだが既に水道屋から送られてくるやつでいっぱいだったのを思い出した。 クリップ…と聞けば色んなタイプのをイメージするだろうがこれはパンの袋を止めてるやつだ。 ブラシ…便器の汚れか歯の汚れ、どちらを落とすか二者択一である。 櫛…こいつを使えるうちが華だと思え。 カミソリ…男性はヒゲ、女性はムダ毛、スケバンは相手を脅す時に使用する。 鼻毛カッター…外部からのほこりやウイルスの侵入を防いでくれる有能な鼻毛を問答無用で切断する。 めん棒…取り出す時、綿の部分を手で摘むのは雑菌が付着する可能性があるのでNG行為だ。 耳かき…美人に膝枕してもらいながら耳垢を取るのは重力により耳の奥に入ってしまう可能性があるのでNG行為だ決して羨ましいから言っているわけではない。 ペンチ…修理や解体作業にかかせない破壊と再生のスペシャリスト。 ニッパー…はさみじゃ切れないワイヤーなどを切ることができる。ペンチでも切ることができるのでいらない子に思われがちだがプラモデルを作る際は大活躍する。 プライヤー…大きくてペンチじゃ挟みきれない物も挟むことができる工具。こいつらのように短所を補い合えるような人間関係を築いていきたいものだ。 ワイヤーストリッパー…電線の被覆だけを剥くことができる。いやらしく感じるのは名前のせいだろう。 ピンセット…例え指にトゲが刺さってもこいつで抜ける。だが心に刺さったトゲはそうはいかない。だから俺が彼女専用のピンセットになってやるのさ。 のこぎり…押してもダメなら引いてみろ。女性ものこぎりも同じだ。 金づち…出る杭は早めに打つのが基本。 バール…根性が曲がった杭はさっさと抜くのに限る。 キリ…千枚通しやアイスピックや目打ちとキャラが被ってると言われがち。 ノミ…吸血昆虫ではない。相棒の金づちがいなければ100%力を発揮することができない。 エンマ…見るだけで絶対に嘘はつかないと誓える。 ペグ…主にテントを固定する際に使う。が、ここにはテントは無いので使用しないグループ固定。 レンチ…ボルトやナットを締める工具。スパナともいうが前者はアメリカ英語、後者はイギリス英語である。 六角レンチ…六角形の穴を回す際に使用する工具。某ゾンビゲームでも謎を解くためのアイテムとして登場する。 モンキーレンチ…つかむ部分の幅を調整できるレンチの上位互換。決して某有名泥棒漫画の作者ではない。 めがねレンチ…これまたボルトやナットを締める工具でレンチよりも力を必要とせず完全にロックするので回してる途中で抜けたりもしない。メガネとつくだけ優等生だ。 ローラー…ペンキでの塗装やグラウンドの整備など色々用途がある。が、この小ささなら顔のマッサージ器になるのが関の山だ。 ハケ…塗装の他、調理にも使われる。名前とは裏腹にフサフサだ。 ノギス…球体や細かな部品でも正確に長さを測ることができる測定器。定規とメジャーの上位互換と思われがちだがそんなに長い物は測れない。 水平器…平行かどうか調べるツール。こいつがなくても床にビー玉を置けば傾いているかどうかわかる。俺の家で実践済みだ。 箸…何かと作法が多いがここにはマナーにうるさい人間はいない。箸にも棒にもかからずとも問題無い。 スプーン…俺には超能力は無いので安心して使用できる。 フォーク…いざとなったら凶器として使用できるがそれだったら普通にナイフを使う。 コテ…主にお好み焼きを焼く時に使用する。ヘラともはがしとも一文字とも言うが正式名称は起こし金である。方言のようなものだ。 スライサー…こいつさえあれば包丁いらず。どんな野菜も楽に千切りやみじん切りにできる。なんだか通販みたいになってきた。 おろし金…万が一海でサンマが獲れてもこいつがあれば大根おろしを用意することができる。大根があるかどうかは別として。 ピーラー…こいつがあればどんな皮もつるりと剥けるが、俺には必要の無いものだ。 クルミ割り器…本気を出せば素手でクルミを割れるがずっと手の中で転がしていたい派なんでそんなことはしない。 泡立て器…泡は立てても荒は立てるな。トゲトゲせずに柔軟にいけば事はうまくいくもんだ。 型抜き器…俺はこれまでこいつで抜き取られたような型にはまった生き方しかしてこなかった。しかし無人島(ここ)には決まった型など無い。今こそ自分の思うままに自由に生きるんだ。 ウロコ取り器…これから魚を調理する機会が多くなるのでさぞ重宝するであろう便利なツール。彼女が見れば目からもウロコが落ちるであろう。 ディッシャー…アイスをコーンに乗っけるのはもちろん、ポテトサラダを盛り付けたり肉団子を作る時にも重宝する。なかなかいいもんでっしゃーろ……寒いな。アイス食ってないのに。 マドラー…スプーンやストローに出番を奪われがち。仲間外れにせずこいつも混ぜてやってくれ。 ストロー…こいつで飲むヤシの実のジュースは格別だろうが、残念ながら二股には分かれていない。 茶こし…野草の中にはお茶として飲めるものもあると聞いたことがある。ほっと一息つきたい時は活躍してもらおう。 スポイト…サバイバルで必ず直面するのが水不足。こいつを使って葉の上に溜まる雨露を集めればうがい程度はできるだろう。 糸通し…俺は老眼ではないのでこいつを使わずともすんなり通せるだろう。ただ若干糸目にはなるだろうが。 リッパー…縫い目をほどく時に使用する裁縫道具のひとつ。縦の糸は彼女で横の糸は俺。この頑丈に縫い合わされた布だけはこいつでもほどくことはできんだろう。 まち針…本来は裁縫に使用するものだがここでは釣り針として使用するのが吉かもしれない。 指サック…こいつをはめて数えきれないお札を数えるのが夢だ。 空気入れ…どんなに萎びた奴もこいつにかかればシャキッとする。ただポッカリと穴が空いてる奴はお手上げだ。 判子…押せば“佐藤”という文字が現れる。ちなみに俺は佐藤ではない。 方位磁石…これで迷子になっても安心……したいところだが別でついてる磁石のせいで使い物にならない。 虫眼鏡…探偵気分を味わいたい時に使用するが言うほどそんなに使ってない気がする。 懐中電灯…当然無人島には明かりなどない。夜になれば完全な闇が辺りを包む。しかしこいつがあれば真っ暗闇でもトイレに行くことができる。手動式なので常に回しておかなければならないのがネックだが。 砂時計…三分計れるのでカップラーメンを食べる時の必需品。早く役立てたいものだ。 望遠鏡…こいつがあれば遠くを通りかかった船を見つけやすくなる。しかし救助されたら後で騒ぎになるのでできれば自力で脱出したいところだ。 数取り器…カウンターともいう数をカウントするツール。眠れない時はこれで羊でも数えるとしよう。 吸盤…こいつがあればタイルや鏡やハゲ頭にもつけることができる。 呼び鈴…鈴なので熊避けになりそうだが逆に注文を取りにきそうで鳴らすのが怖い。 笛…これなら熊避けになりそうだが今度はヘビが寄ってきそうでやはり怖い。 ギターピック…ここまでくるともうネタが尽きて無理矢理入れた感が否めない。 栞…読書を中断する時に使用する。この作品にも使えるので今すぐ試してみよう。 うちわ…夏には持ってこいだが、ここでは火を起こす時ぐらいしか使用しないだろう。 水鉄砲…夏には持ってこいだが、ここでは火を消す時ぐらいしか使用しないだろう。 風車…ルビによって大きくなったり小さくなったりする代物。これについてるのはもちろん息だけで回る方だ。 肩たたき棒…凝り固まった肩を叩くツールだが、あまり強く叩いたり揉んだりするのはよくない。加減を知らない彼女に叩かれた時身を持って知った。 孫の手…主に背中を掻くツールだが俺には彼女の手がある。しかしネイルをした手で引っ掻かれるのは二度とゴメンだ。 知恵の輪…娯楽の無い無人島では貴重な遊具。まあ俺は彼女と話の輪を広げる方が暇潰しになるがな。 猫じゃらし…猫をじゃらすポイントは緩急のつけ方だ。ただ闇雲に振り回していても猫はすぐに飽きる。 パチンコ…ゴムの反動で石などを飛ばせるが俺は銀玉を飛ばす方が好きだ。 玉ゲージ…その銀玉を飛ばす方のパチンコの釘を調節するのに使う。見ていたらますます打ちたくなった。 おしゃぶり…たまには童心に返りたいとは思うがさすがに物心つかない赤子に返る気は無い。まあ、彼女がそういうプレイを望むなら考えないわけでもない。 自撮り棒…この島に流れ着いたのも何かの縁だ。一枚くらいは思い出として残してもいいかもしれない。 スマホスタンド…ネットで動画を観る時に便利なツール。まあここにはWi-Fi飛んでないから意味無いんだがな。それ以前に俺のスマホ海に落としたっぽいしあっても充電できないしネットの無い生活なんて考えられないしマジで一刻も早くこんなところから脱出したいと決意がみなぎってくる。  ……以上、100個。いやあ、これだけあれば怖いもん無しだ。中には到底役に立つとは思えない機能もいくつかあるが、それも遊び心ってやつだな。  とにかくこれは彼女にいいところを見せるチャンスだ。俺がいかに出来る男かアピールしなくては。 「よし、まずは雨風を凌げる拠点を作ろう。それから食糧を調達しないとな」 「わー、マジサバイバルっぽーい」  こうして俺と彼女のサバイバル生活が始まったわけだ。  が、完璧に見えたこのサバイバル生活に、唯一欠けていたものがあった。それは――
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