百徳ナイフ

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「……ん、う~ん」  俺の側で倒れていた彼女が目を覚ました。 「……ここ、どこ系?」 「どうやらどこかの島に流れ着いたようだ」 「えーなにそれ。ケータイも電波無いし人もいないっぽいし、ぶっちゃけこれ遭難じゃね? マジウケるんですけど」 「やはり川下りしながらボートで昼寝するものではないな」  まあしかし、こんなことで慌てる俺ではない。こんなこともあろうかと、とっておきのアイテムを用意していたのさ。  俺はズボンのポケットからそいつを取り出した。 「なにそれ?」 「よくぞ訊いてくれた。こいつは通販で購入した“百徳ナイフ”! その名の通り100の機能(ツール)を備えた万能ナイフで、こいつ一本あればどんなピンチも切り抜けられる優れものさ!」 「へー、やばーい」  彼女はあまり関心を示してないようだが、男はこのような秘密満載のハイテクアイテムに弱いのだ。俺も例に漏れず、値はかなり張ったが思わず衝動買いをしてしまったわけだ。  とりあえずこいつに備わっている機能をおさらいしておくとしよう。
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