一緒に……。

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一緒に……。

 次の月曜日、いつもの駅で安倍と会った。    昨日の安倍からの手紙のことが頭に蘇る。胸が高鳴り、言葉が出なかった。    気のせいか、安倍の口数も少ない。帰る途中に、二人はいつもの駅から十分くらいの駅で電車を降りた。   「……この間はすみません。少し留守していて……」   「いいえ、私が勝手に……。それに麗さんによくしてもらって、ホントに助かりました」    秋の空には珍しく暖かな風が夕子の髪を揺らした。少し風が強い。   「お天気……。台風でも来そうな風ですよね?」   「はい、今夜は少し暖かいので降るかも知れませんね。でも、今は星が空いっぱいです」   「星……キレイですか?」   「……ええ、とても……空気も澄んでいて気持ちのいい夜です」    脂の香ばしい匂いや甘い菓子のような匂いに迎えられた。安倍と腕を組んでいた。商店街の割に雑踏は感じられなかった。    安倍が大きく深呼吸した。    夕子も大きく息を吸い込む。昼間とは違い透明な空気が胸いっぱいに満たされる。その中に安倍のトニックシャンプーの匂いを感じた。    :   「安倍さん、ハガキ……」   「ああ、届きましたか? 少し心配だったんです。届くか、どうか……」   「あっ、点字……」   「ああ、通販でセットを買って、それで……間違っていませんでしたか? 完全に独学なので……」   「……はい、完璧でした」   「あははっ、そっか、よかった」    夕子と組んだ逆の手が彼の頭の方に動き、ポリポリと掻いているのが分かる。   「ふふふ、安倍さん、小学生みたいですね。私とても嬉しかったです」    夕子は空を見上げた。涙が溢れる。   「ああ、もうそろそろ帰らないと……」    安倍が呟く。    指先で指触時計を撫でた。午後九時四十分。    ――帰りたくない……帰りたくない、って言わないと……。後悔……後悔するのはイヤ……。   「……安倍さん……もしよければ……私、もう少し一緒にいたいです。安倍さんと……」    胸が高鳴った。    安倍の腕に強く夕子を引き寄せられる。トニックシャンプーの匂いが近くにあった。   「夕子さん、いましょう。今夜は一緒に……」
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