エピローグ

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エピローグ

 始発電車が走り始めるころ、二人はホテルを後にした。夕子の身体は安倍と繋がっていた場所に少し痛さと、安倍の感じが残っている。   「雨、止みましたね」    昼間とは違い、透き通るような空気の匂いがした。バイクの音があちらこちらと走り回っている。   「ええ、東の空が少し明るくなってきましたよ。今日は晴れですよ」   「こんなに朝早くお散歩するなんて気持ちいいですね」    夕子は大きく息を吸い込んだ。  二人の間に沈黙が続いた。 「立花さん、あの……」   「ハイ……?」 「僕と一緒になってもらえませんか?」    真っ直ぐな安倍の声だった。   「嬉しい……。でも、私は目が……」    結婚は諦めなければ、と誰から言われた訳ではなく夕子自身、子ども頃からそう思っていた。   「立花さんの目は個性です。顔カタチがみんな違うように……それだけです。立花さんにはもっといいところがあります」 「いいところ?」 「ほら、立花さんはこうして僕を元気付けてくれてます。だから、僕も生涯、立花さん……君の光になります。だから、……」    夕子は安倍の胸に包まれた。涙が溢れる。 「ハイ……安倍さん、…………よろしくお願いします」 :    それから半年後、夕子と安倍はいつもの駅の近くにある小さなチャペルにいた。   「ほら、オーナー、夕子さんのネイルとてもキレイでしょ?」    石鹸の匂いがして、ふう、と指先に息を感じた。   「夕子、このドレス、似合うわよ。私のお下がりだけどね」    夕子の母親の笑う声が聞こえた。   「ほら、神父さんが来る前に記念写真撮ってよ」と言いながらトニックシャンプーの匂いが夕子の手を取る。   「みんな!ハイ、チーズ……」    夕子の大きな声がチャペルで響いた。      完
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