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私は昔からよく叔母の家に来ていた。そして叔母の家の玄関のポーチ柱の横にはいつも小さなビンが置いてあって、私は叔母の家に入る時いつもそれを横目で見ていたが、決してそのビンについて尋ねたりはしなかった。
叔母は何故か家から一歩たりとも出ない人で、その理由については“聞いてはいけない”気がしていたので、今日に至るまでその理由は知らない。
そして大学生になった私はそんな叔母の為に時々母に変わって食品や日用品を届けていた。
“ピーポーン”
「こんにちは。」
「いつもすまないね。さ、上がってお茶でも飲んおゆき。」叔母は私が来るといつも玄関までは出迎えてくれた。叔母は一人暮らしで旦那さんや子供は居ないようであった。亡くなってしまったのか、離縁したのかは知らないが、私は特にその事についても特に尋ねなかった。
私はいつものようにリビングで叔母が紅茶を入れてくれるのを待っていた。
“ピーポーン”
玄関のチャイムが鳴った。
「誰か来たみたい。出ようか?」
「あら、頼めるかい。なら、ついでに外の柱の脇に置いてあるビンを取ってきてもらえるかい?」
「うん、分かった。」私は玄関のドアを開けた。しかし、そこには誰も居なかった。
『あれ、誰も居ない…。』私はこの時異様な感覚を覚えたが、『誰も居ないなら。』っと叔母に言われた通りポーチ柱の脇のビンを拾い上げようとした。
「キャー‼︎」私は大声を上げて尻餅をついた。私は今日もその小さなビンを横目で見ながら叔母の家に入った。しかしビンはいつもと同じように“から”だった。だが、今ビンを取ろうとした時、ビンの中には営業マン風の男が居て、必死にビンを叩いているのだ。
「おやおや、“やっぱり”かい。」私の悲鳴を聞きつけた叔母が玄関から言った。
「叔母さん…、これって…」叔母の話によると、この小さなビンは“邪除けのビン”と言って、この家に“よこしま”な考えを持って訪れた者を吸い込み、永久に閉じ込めてしまうとの事だった。そしてビンは何を使っても、何をしても割る事は出来ないし、ビンに吸い込まれてしまった者は二度と出られないと叔母に教えられた時、私は背筋が凍り付いてしまったかと思うほどに冷たく硬直していた。
すると叔母は何か思い付いたように自分の寝室に向った。
「ついでと言っては何だけど、紹介しておくよ。」叔母は一つの小ビンを大事そうに持っていた。
「その人は…?」
「これは三十年前に私がこの邪術を覚えて初めて封印した人間、私の旦那さんだよ…。」叔母はそう言うと悲しそうな顔をして、小ビンの口からクッキーの欠片を一つ落とした。
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