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第24話
高津と対峙したその夜のこと。その夜、俺は百合を抱いた。俺自身にも百合自身にも揺るぎない気持ちがそうさせたのかもしれない。
強く想う気持ちは、心も体もお互い求めた。それは自然な流れだった。その夜、俺は「どんなことがあろうと百合を離さない」と誓った。
百合もその言葉に全てを任せてくれたようにも思えた瞬間だった。
仕事終わりに会う回数は増えて行った。それは突然だった。今宵も半酔いで四条商店街をじゃれ合いながら、国道に差し掛かると、突然、黒のバンが俺の目の前に止まった。そして後部座席から三人の男が現れた。
俺は突然の出来事に何もできず、黒の布を頭に被せられて車に強引に乗せられた。
「きゃあ! 助けてあげて!」
百合の言葉は虚しく掻き消され、ドアは閉まり車は走り出した。車内で俺はのたうち回ったが、すぐに猿轡と腕にはガムテープが巻かれて動けなくなった。
顔には黒い布が被されて、そのまま車は走っていた。小一時間かそれ以上かは判らない。だが、突然車は止まり、羽交い締めのまま男三人に俺は車から降ろされた。
「兄ちゃん、ちょっと痛い目みるけど勘弁しいや」
「何やねんお前ら。この布解けや!」
「お前は答えるだけでええ。質問は無しや」
一発俺の顔面に拳を入れる。激痛が走り、うな垂れた。そして柱か何かにくくりつけられた俺は靴と靴下を脱がされて、冷たい氷水のバケツに足を入れさせられた。
夏なのに芯から冷える感覚味わう。
「さっき一緒におった女の自宅は?」
「知らん」
「知らんわけないやろ。答えんともっと痛い目見るで」
「クッ知るか!」
何度か顔面を殴られる。
「いつまで、根性出せるかやな」
男たちは俺に投げかけた。そして百合の自宅と名前や行動パターンなどを聞いてくる。しかし俺は黙りを決め込んだ。
何があろうと俺は百合を守りたい。そう一心で殴られようが、氷水を頭の上からかけられようが黙った。
「そうか、ならばこれはどうだ?」
「……」
「あの女が今晩、どうなっても良いんだな」
「何! それだけはやめろ。彼女は関係ない」
「ほぉ、これが誰の差し金か知ってる口ぶりだな」
「さぁ、誰だか……。俺はそんなのに興味はない」
あの時、高津と対峙した時の言葉からすると、裏で動いて居るのは高津だと思った。だがそれは口にはしなかった。
「兄ちゃん、なかなか根性あるな。朝まで待っとけ。助けが来るかもな」
男たちはそう言い残すと、車に乗り込みタイヤを軋ませながら走り去った。シンと静まり返った空間になった。夜中、ここは多分工場跡地か何か、遠くで車の走る音がたまに聞こえるぐらいの距離だ。
誰もこない俺は叫んで見た。だが、帰って来るのは、俺の響いた声のみだった。ずっと立ちっぱなしで疲れた。俺はそのまま堕ちるように眠った。
鳥の囀りと太陽の光が当たっているような暖かさを感じた。遠くから車の音がこちらに近づいてくる。
車は俺の近くで停まり、ドアが二つ開く音がする。それと同時に聞こえたのは「大丈夫か!?」と言う勝田店長の声と、百合の「恭吾!」と俺の名を呼ぶ声だった。
俺は、勝田店長と百合によって解放された。これは高津からの宣戦布告だ。そしてその意味を知ったのはそれから数日後の出来事だった。
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