センチメンタルバニラな僕ら

　「香水？そんなんいつもつけねえじゃん」

　僕も靴を脱いでひかりの後に続き、話を返しながら部屋の中に入る。

　「海外出張のお土産にね、だいぶ前にもらったのそのままにしてて。思い出したからせっかくだし今日つけてみようかなーと思って」

　そう言いながら、ひかりは紙袋から出した赤ワインのボトルをコトンと机に置いた。

　「赤ワインだったら今日のご飯にぴったりだねーさすが章斗(あきと)！」

　二人ないし一人用でも十分な小さめの丸テーブルには、チーズの盛り合わせ、カルパッチョ、ポテトサラダにローストビーフと言ったひかり好みのカラフルで俗に言うオシャレな料理が机いっぱいに置いてある。「ま、今日もデパ地下様々なんだけど」とさらっと言い立ち上がったひかりは、そのままキッチンへと入っていく。