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ひかりは料理が苦手だ。ただそれはひかりが自分で言うだけで、ひかりの手料理を食べたことがない僕には実際のところ上手いのか下手なのかはわからない。けれどいつもこうしてひかりの家で飲む時は、決まって彼女チョイスでデパ地下の惣菜が用意してある。
以前、皿に移してしまえば誰が作ったかなんてわからないのだからわざわざ言う必要なんてないだろうと言ったことがあった。するとひかりは「わかる人にはわかるもんなの」と笑って見せた。その顔が少し寂しそうに見えたのを、僕は今でも覚えている。
今思えば、あの時の表情が僕がひかりに惹かれたきっかけだったと言ってもいいのかもしれない。
けれど、その後程なくして僕は彼女のその表情の理由をすぐに知ることになった。
「・・・今日おっさんは?」
「ちょっと、いつも言ってるじゃん。仮にも上司なんですけど!」
「今さらだろ」
「もお・・・」
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