センチメンタルバニラな僕ら

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 「で?」  「・・・今日は会食だって」  キッチンからワイングラスを二つ両手に持ったひかりは、ぶっきらぼうに答えながらそれを丸テーブルの端に置いた。  あの日から、三年が経とうとしている。課長とひかりの二人の関係も、僕の彼女に対する気持ちも、この三年何ひとつ変わることの無い平行線のままだ。  この三年の間で、二人で会う機会は格段に増えた。入りこそ最悪だったものの、こうして僕のポジションはよく言えば彼女の相談相手、悪く言えば都合のいい男。けれど、それはひかりにも言えることで、彼女は言うなればあの男の"都合のいい女"だ。  僕が二人の関係を会社に晒してしまえば、このご時世だ、二人はすべてを失うだろう。三年間、その気になればいつでもそれが出来たはずなのにそうしなかったのは、きっと僕にその勇気がないからだ。
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