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「どしたの?」
「ビール。もらうな」
「えっ、ワイン飲まないの?グラス持ってきたのに」
「最初はビールだろ」
「えー。じゃああたしもビールにする」
「別に飲みたかったらワイン飲めよ」と笑いながら、僕は冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出す。よかった、上手く話を逸らせたとひかりに笑顔を向けながらホッとする自分がいた。
「だってこれ買ってきてくれたの章斗じゃん」
「それなら一緒に飲みたいじゃん?」と俺から缶ビールを受け取って、ひかりはにっこりと笑ってみせた。いつもそうだ。彼女は無自覚ながらこうして男か喜ぶであろうことを平気で口にする。加えて、「あ、ビールありがとね。ごめんね取りに行かせて」と相手をここまで気遣うこいつは、最早確信犯じゃないのかと本気で思うほどだ。
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