センチメンタルバニラな僕ら

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 「はいじゃあ、かんぱーい!」  「おつかれー」  プシュ、と缶ビールのプルタブを開け、互いに缶を合わせる。喉を潤していくアルコールは、今日が華金ということと、あいつとひかりは今日会うことは無いという確信で、いつもの何倍も旨く感じた。 --------------------  気づけば、終電も間近に迫った時刻になっていた。ここから駅までは徒歩五分。小走りでもまだ十分間に合う距離だ。さて今日はどうしようか、とひかりの方をちら、と横目に見ると、とろんとした目でテレビを見ていてこちらの視線にはまるで気づいていない。  あいつがここに来ない日、今日みたいな日に"友達として"何度かここには泊まったことはあった。あわよくば、そんな下心が今までなかったかと聞かれれば嘘にはなるが、本当にそれ以上の関係になったことはない。酔った勢いで、と言ってしまえば簡単だけれど、自制心はちゃんと持ち合わせているし、肝が小さい僕にはもし嫌われたら、という思いからやはりそれ以上が出来そうにない。
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