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パチパチと薪ストーブの音と、ポタポタと雨樋から溢れた水音だけが聞こえる2人だけの空間。
隙間なく、くっ付いた腕から伝わる熱に、今さらながらクラクラする。
”ユノさんが好き"
溢れた想いと、自分が男だという事実。
現実と想いの狭間で揺れ動く想い
僕が男だって分かったら、きっと、ユノさんは僕を拒絶する。八方塞がりなこの想いを伝える事なんて出来ない。
僕が女だったら‥
神様は意地悪だ。なんで、たくさんいる姉たちの中で僕だけ男にしたの?
どうしようもない事で神様を呪った
「雨‥ 止みそうにもないね…」
「…そうだな。」
「「………」」
沈黙が再び2人の間に溝を作る。今は、その方が有り難いような気もするけど…
想いを吐き出したいけど、出来ないもどかしさが、僕をさらに無口にする。
「ジジ‥」
耳元で囁く心地よい低音に、おもわず総てを委ねてしまいそうになる
「ユノさん…」
絡まった視線を外せないまま、熱い口付けを交わせば、想いが溢れ出す一方で。自分との葛藤が続く
どうしょう?こんなにも好きなのに‥こんなにも傍にいるのに…もどかしい
一層のこと、本当の事を言って、嫌われてしまおうか?
でも、今の僕にはそんな事、耐えられそうにない。
このままずっと、傍にいたい‥雨なんて止まなければいいのに‥
一時間もすると、無情にも雨は止んでしまった
「そろそろ、学校に戻ろうか?」
ユノさんの言葉に、ただ頷く事しか出来なかった
乾いたシャツを羽織り、学校へと、向かう。
僕の意気地なし
結局、男であることを打ち明ける事は愚か、想いも口にする事は出来なかった
ただ、互いの熱を持った視線を絡ませ口づけを交わしただけ
きっとユノさんも僕の事が好き。でもそれは女の子の僕。そんなことは分かりきった事なのに、欲張りな僕はユノさんが欲しい
全身でユノさんを感じたい
両思いだという安心感とは別に隠された僕の秘密が僕を臆病にする
でも、心の中に芽生えた野望にも似た恋心の炎は、簡単には消火ことはできなそうだ。
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