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ディスプレイに映し出される感染者数だの致死率だの、うなぎ上りに伸びているグラフに絶句する。 「ちょっと想定外だったのが人と会う、っていうのが半端なく制限されててね。患者さんと医療スタッフだけ。それも会話は必要最小限なことだけ。移動はマイカーで駐車場も分けてある。日々の食料品なんかは他のスタッフがまとめ買いして病棟仕切りのドアの前に置いといてくれるのを持って帰る、みたいな?ラインや電話で会話はできるけど、やっぱり人恋しくなっちゃうのよねえ。」 元妻から届いたものは花だけではなかった。 電話の向こうで彼女が淡々と話す間も、こっちでマウスを動かす手は止められない。 既にあちこちで院内感染が起きていて医療スタッフが亡くなっているところもある。 パンデミックだの未知のウイルスだのは、ガラスを隔てた別世界のことで自分とは無縁のものだと思っていた。 現実はもっと生々しくて、彼女達医療従事者や関係機関が命を盾に作り上げたバリケードによって守られていた。 だがそれより、そんなことはいっそどうでもいい。一番大事なのは 「なあ、今すぐ」 「それでね。あんまり暇だからネットで服でも買おうかなってあれこれ検索してたんだけど、よくよく考えたら受け取りができないよね、って思い当たってね。なんだか馬鹿馬鹿しくなってクリック繰り返してたら、たまたまスイートピーの花束が目に留まったの。それで綺麗に忘れてたあなたのことを思い出した。あはは」
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