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「……何だよそのオチ。」 ーー今すぐ仕事を辞めろーー お前に何かあったらどうするんだ。他の誰ともお前を引き換えることは出来ないんだ、と。 そういうつもりだった。 それなのに。 お前は先手を打って俺の口を止めやがった。これまで同様、大事なことは言えない意気地なしのままでいろ、ということなのか? じゃあなんで花なんか送ってきた? なんで今更連絡してきた? 10年も音信不通だったのに。 牛乳パックのスイートピーは窓からの陽射しで透明感が増したのか、ことさらふわふわして見える。今にも飛んでいきそうだ。 ……飛べるわけなどないのに。 もしかして。 検索項目をスイートピーに変える。マウスでクリックしてざっと目を通す。 ……そういうことか。 「という訳で35歳のお誕生日おめでとうございます。でさ、これからも退屈しのぎに時々電話していい?」 お前、バカにしてるのか? 仮にも元夫。声の調子でお前が今どれだけ不安を感じているのかくらいは手に取るように分かる。 だけどお前が望むなら。 お前が今欲しい言葉をやるよ。 お前に聞こえないように深呼吸をひとつ。 「まあ邪魔しない程度なら付き合ってやるけど。俺も今の仕事めっちゃ気に入ってるしテレワークとはいえ忙しいんだ。だけどな条件がある。」 「条件。なあに?」 興味が湧いたのか、お前の声が明るい。 元妻から贈られたスイートピーの花言葉は『門出』 だけどお前の伝えたかったのはそれじゃないよな。 もう一つの花言葉は『私を忘れないで』 お前、本当は遺言のつもりでこの花を送ってきたんだろ。
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