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お前は覚悟を決めてるんだな。だから花を送ってきた。私が死んでも私の事忘れないで、ってか?
バカだな。お前を忘れるわけがない。形は変わっても俺達は永遠に同志で夫婦なんだぞ。
「新型感染症が収束して非常事態宣言が解除されたら俺のバースディパーティやるからな。その時は必ず有給休暇取って遊びに来い。」
言葉の陰に真意を込める。俺がお前の事分かるように、お前にも俺の思いが伝わるはずだ。
死ぬな。
あの日テレビの前で言葉こそ交わさなかったが二人とも誓ったことは同じ。脆い人の命を守りたい。その思いを叶えるためにお互いひたすら頑張ってきた。
そして今お前は文字通り自分の命を危険に晒しながらひたすら走っている。止めることができないならせめてエールを送ろう。
俺達はまだ夢半ばだ。やらなきゃいけない事は山程ある。
だから。
死ぬな。
そしてお互い一息つけたら。
もう一度手を繋ごう。
あの日のように。
「うん。約束、絶対守るから。」
静かだが力の込もった声が帰ってくる。
元妻から届いた花が、飛び立った。
完
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