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元妻から宅配が届いた。 伝票には『生花』と書いてある。 一体急にどうしたんだ?と首を捻っていると、宅配のお兄さんが申し訳なさげに 「あのー、サインかハンコを。」 と促してきた。 「あ、ああすみません。」 慌てて胸ポケットからペンを取り出そうとして手がするんと滑る。手元を見るとTシャツジーパン。うっかりしていた。朝起きたそのなりでパソコンの前に座っていたんだった。「これどうぞ。」 お兄さんが差し出してくれたペンを受け取ってサインをすると、「ありがとうございました。」と早々に立ち去った。 カンカンッとアパートの外階段を駆け下りる音が響く。その音が消えたと思ったらあっという間にエンジンがワンとなって、これまたあっという間に聞こえなくなった。 今とんでもなく忙しい仕事の一つだろうと同情する。 受け取った荷物をそのまま食卓テーブルに置こうとして改めて生花だったことを思い出す。 生花(せいか)だよ。ナマだよ。とっとと水につけないと。 いや待てよ、家に花瓶なんかあったか? 細長い箱にぴったり貼られた紙テープを剥がし蓋を開いた。 甘い香りが1DKの部屋に拡散した。 元妻から花が届いた。 箱の中には五本ほどの花が納まっている。花の切り口のところは銀紙で巻いてある。箱から取り出して目の高さにかざす。
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