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ピンクや白のフリルの花びらがふわふわと枝についている。どこかで見た記憶のある花だ。もしかしたら花束にはよく使われるものかもしれない。ただ申し訳ないが自分が花の名前でわかるのは桜や菊程度。これの名前は見当もつかない。強いて言うなら花の形が蝶のようだ。 とにかく水につけないと。 シンクに目をやると昨日飲み切った牛乳パックが濯いだまま逆さまに置かれていた。 あれでいいんじゃないか? 花束を手にいそいそとシンクに向かう。 元妻から花だけが届いた。 ………うん。 まあこれはこれでいいんじゃないか? 花の生えた牛乳パックを両手に持ってうろうろ。窓辺が一番よさそうだがベランダに通じる掃き出し窓の前に置くと蹴飛ばすこと間違いなし。仕方がないのでワーキングデスクの上に置くことにした。が、いかんせん仕事の資料やパソコン、タブレット、それ以外にもビールの空き缶やいつ封切ったのかわからないポテトチップス、惣菜トレー等、モノがありすぎてまずは机上の片づけから。 こんなもん送ってきたばっかりに、と横目で花を睨む。 枝がことりと揺れた。 『ここに残るわ、私。』 あの時何と答えたんだっけか。 そうだ。 『ああ、わかった。』 そう答えたんだった。 元妻からラインが来た。 『花届いた?』 まずは届いたよ、と入力。その後にありがとうと付け加えるか、それとも一体どうしたんだ?と続けようかと悩んで指が止まる。
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