おばあちゃんの心

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おばあちゃんの心

ぼくとチィが檜枝岐村役場についたとき、あたりは夕暮れになっていた。 ぼくたちが歩いた距離は、尾瀬の10分の一にも満たなかったけれど、 とても疲れてしまった。 おばさんと別れた後、帰りのバスはほとんど眠って過ごした。 「チィのおかげで、花が見れたよ。ありがとう。」 「ううん、私のほうこそあんがとない!  ケイタとお花見れて良かった。  もう一度見れて良かった!」 チィの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。 もう一度? チィは前に見たことがあったのかな? 少し疑問を感じたけれど、ぼくはもう帰らなければいけなかった。 「チィ、ぼくもう帰らないと。  明日、ミニ尾瀬公園で遊ぼう!」 そう言い残すと、ぼくは急いでおばあちゃんの家に戻った。 朝ごはんも昼ごはんも食べずに遊びに出かけたきりだったので、帰ったらお母さんはとても心配していた。 尾瀬に行っていた、と説明したら 「子供だけでそんな遠くに行くなんて!!  何事もなかったからいいようなものの…。  遠くに行くときは、お母さんに言わないとダメよ!」 と、ひどく怒られてしまった。 夕食後、お父さんはしみじみと言った。 「たんけんしてくるって書いてあったけど、まさかそんなに遠くに行っていた  とはなぁ…」 「ほんとにびっくりしたわー」 お母さんもしみじみ答えながら、奥の部屋から一冊の本を持ってきた。 お母さんは、お父さんの隣に座ると表紙を開いた。 「これ、おばあちゃんの昔のアルバム。  ケイタのおじさんが貸してくれたのよ」 『おじさん』というのは、お母さんのお兄さんのことである。 おじさんは、おばあちゃんの家で今も暮らしている。 ぼくとお父さんも顔を寄せてアルバムをのぞき込む。 何ページかめくると、見たことのある少女が映っていた。
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