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理由知るは本人のみ
私の通う学校は少し変わっている。
どう変わっているのかというと、まるで漫画のようだとしか言えない。
例えば、先生が皆イケメンだったり、私のクラスにはイケメン生徒が揃っていたり。
まるで乙女ゲームのヒロインにでもなったんじゃないかというほどに、私の周りはイケメンで囲まれている。
とはいえ、ここは現実世界。
人と話すのが苦手な私には、友達もおらず、クラスではいつも一人。
イケメンが同じクラスだからといって、話す機会などありはしない。
「山中、教材を運ぶのを手伝ってくれるか」
皆が友達と話す中、一人ポツンと席にいた私は、次の授業で使う教材運びを先生に頼まれ手伝うことになった。
使う教材を先生が手に取ると「手伝ってもらって悪いな」と言いながら私に手渡す。
私は「いえ」と小さく返事をすると、先生と一緒に教材を運ぶ。
先生は大きな教材ばかりを持ち、私に渡されたのは軽いものばかり。
こういうイケメンで優しい先生だからこそ、男女から人気があるのだろう。
人気があるといっても恋愛ではなく、先生というより優しくて面倒みのいい兄という存在のようにみんな見ているようだ。
「どうかしたか?」
「いえ」
つい横を歩く先生の顔をジッと見てしまっていた私は、視線を前に向ける。
何故私の学校にはイケメンの教師や生徒がいるのか。
偶然なんだろうけど、話すのが苦手な私にとって先生だとかは関係ない。
家族みたいに見れるなら緊張もしないのだろうが、みんなのように兄として先生は見れない。
そもそも生徒も先生も人なのだから、私からしたら内心ドキドキしっぱなし。
感情が顔に出にくいため無表情でいられることだけは有り難い。
顔を真っ赤にしてあたふたしていたら、それこそ恥ずかしくて二度と学校に来ることさえ出来なくなるところだ。
先生と二人誰もいない教室に教材を運ぶと、先生は「ありがとな」といい私の頭をポンポンと撫でるように触る。
まるで子供にするような行動に、私は「失礼します」とその場から去ろうとすると、先生の声に足を止めた。
「山中は、人と話すの苦手だろ」
背を向けたまま反応もせず、扉に掛けた手が止まったままでいると、先生は更に私の背に言葉を投げかけた。
その言葉を聞くと私は何も言わず教室を出て、横の廊下の壁に背を預ける。
『話す練習ならいつでも付き合ってやるから言えよ』
先生に言われた言葉を思い出し、私の目からは涙がポロポロと零れ落ち気づく。
私は寂しかったんだと。
私は感情が顔に出にくいため、自分でさえ気づけなかった。
そんな私の辛さに先生は気づいていた。
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