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「で、山中はその後どうなんだ?」
突然話を振られ、私は視線を逸らしながら「友達、できました」と言う。
先生に付き合ってもらったかいがあり、遂に私にもクラスで話せる友達ができた。
それも、男女両方の。
まさか、席が近かった女子二人と、イケメン生徒の一人、計三人と友達になれるとは思わなかった。
とはいっても、声をかけてきたのはイケメン生徒である景渡くんから。
声をかけられたときは驚いたけど、言葉を詰まらせながらも話すことができた。
そしてそのあと二人の女子とも仲良くなって、今では三人と自然に話せる。
これも全ては付き合ってくれた先生のお陰。
「先生、ありがとう」
「俺は何もしてねーよ。山中が頑張ったからだ」
その後、私が帰ろうと下駄箱に向かっていると、友達の女子二人の姿が見えて声をかけようとすると、二人の話し声に足を止めた。
「山中さんって前は無表情で感じ悪かったのに、今は少し明るくなったよね」
「だよね。絶対それって景渡くんに近づこうとしたからだよね」
二人の会話を隠れて聞いた。
二人は景渡くんに近づきたかっただけで、私は利用されただけだった。
だがら嫌なの人なんて。
簡単に裏切って嫌って傷つける。
私が人と話すのが苦手になったのだって、昔に仲が良かった友達に裏切られたからで。
無表情だって、ただ感情が出にくいだけなのに。
私は下駄箱から離れると、その足は教室に向いていた。
「山中、帰ったんじゃ――」
プリントを纏めて職員室に行こうとしていた先生がまだ教室にいた。
私は先生の胸に顔を埋めると、先生のシャツをぎゅっと掴む。
状況がよくわからない先生は、何も言わず、片手を私の後頭部に添える。
「先生、私、友達なんて出来てませんでした」
私は全てを吐き出すように話した。
友達だと思っていた二人が私を利用していたこと。
そして、もしかしたら景渡くんも私のことなんて友達に思っていないんじゃないかという不安。
「んなことねーよ。山中は表情に出なくて分わかりにくいが、本当は優しくて明るいやつだ」
先生の胸でしばらく泣いたあと、私は家へと帰り、先生に言われた言葉を思い出していた。
『山中を見てるヤツは案外近くにいるもんだぞ』
私を見てる人。
そんな人が果たしているのかわからない。
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