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「今までは俺、センパイの家を転々としてたんだけど、そのセンパイ達と揉めちゃったからね。
もう戻る事は出来ないし、これからどうしようかなって思ってるよ。
センパイ達の世話になるまでは、ツレの家とかに何回か泊めてもらったんだけど、ツレはともかく、そこの親が『あの子、いつまでいるの』とかヒソヒソ声で言いやがるから、あんまり長居は出来ないんだよな」
「身元を引き受けてくれる、親戚とか兄弟とかいないの?
お母さん方でも、別れたお父さん方でも、思い付く限り、片っ端から電話を掛けていくとか」
「スマホに、親戚とかの連絡先が入ってたんだけど、そのスマホもセンパイにぶっ壊されたからね……。
それに、仮にスマホがあったとしても、俺みたいな『ろくでなし』を養ってくれる親戚とか確実にいないよ」
重苦しい口調で語る少年の言葉に、絢音は何も言えなくなった。
「まっ、取り敢えず警察に行って、その後に施設なりババアのトコに強制送還されるなり、するよ。
でも、ババアは『母親って立場を忘れて男と二人暮らししたい』とか言ってたから、俺がそこに割り込んでもいい顔しないだろうなぁ」
「女でいたい、って気持ちは分かるけど、仮にも親だったらもっと子供の事を考えてしっかりしたらいいのにね……」
「しょうがないよ、そういう人なんだから」
少年は再びため息をつくと、食べ終えたカップヌードルの空き容器を手に持って立ち上がった。
「あの、ゴミ箱どこ?」
Tシャツとトランクス、という状態で尋ねてくる少年。
「冷蔵庫の横。
ゴミ箱2つ重なってるけど、上が一般ゴミで下がプラだから」
絢音の言葉に少年は頷くと、手に持ったフォークとカップヌードルの空き容器をゴミ箱に捨てた。
「お姉さん、色々ありがとう」
ゴミを捨て終えた少年は振り返ると、心配そうな面持ちを浮かばせている絢音に向かって、身体を折り畳むように深々と頭を下げた。
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