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「……えっ?」
絢音の言葉に、少年は僅かに口元を緩ませた。
が、変に期待をすれば待っているのは失望、という経験則があるからか、少年はこれ以上言葉を続けようとせず、黙ったまま絢音からの次のアクションを待っていた。
「いや、しばらくの間だったら、別にココにいてもいいよ。
君、今のトコロ、戻ったり帰ったりする場所が全く無い状態なんでしょ」
「まぁ、そうなんだけど……」
少年はドアノブから手を離すと、はかるようにダイニングチェアに座ったままでいる絢音を見つめる。
「でも、本当にいいの?
お姉さんとは昨日助けてもらっただけ、って関係だし、全くの赤の他人の俺にそこまでする義理、お姉さんには無いと思うんだけどなぁ」
「いいよ、別に」
絢音は、首をゆっくりと横に二回振る。
「実は言うと、昨日彼氏に訳分かんない事を言われて別れちゃってさ。
今のアタシ、全くの独り身って訳。
で、気持ち的にちょっと寂しいってのもあるから、君がココにいたらその寂しさがちょっとは紛れるかな、って思って」
「待って、そんなざっくりとした理由でいいの?」
論理的とはとても言えない絢音の言い分に、少年は失笑を洩らした。
「じゃあ、やめとくの?
アタシも、無理にとは言わないけど。
このままじゃ、君があまりにも可哀想だから、こっちとしては同情も含んで訊いてるだけだよ」
「いや、確かに有り難い話だけど……」
「だったらさ、断る理由なんて無いじゃん。
『孤独感』を感じてるモン同士、当分の間、二人で一緒に住もうよ。
もちろん、年単位になるとこっちも厳しいけど、1、2ヶ月の間くらいならアタシは別に構わないよ。
君、年の割に結構しっかりしてそうだし、2ヶ月くらいココで生活してたら身の振り方を考えるでしょ」
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