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「やっぱ、年上はアタシに合ってなかったって事か……」
酒臭い息と共に、絢音は続けて独り言を吐いた。
よくよく考えてみれば、年上と付き合ったり関わったりすれば、ロクな目に合っていない。
これまでの恋愛遍歴を改めて鑑みれば、自分は年下と付き合うべきなのではと、絢音は千鳥足で歩きながら思ってきていた。
「あー、神様。
どうか可愛いタイプのイケメンで料理の上手な年下の男の子を、アタシの目の前によこしてくださいー」
酒に酔った勢いで、絢音が妄想を口にしたその時であった。
ベタン、と何かが地面に打ち付けられる音が、絢音の耳に聞こえてきた。
──不審者が、いる?
思った絢音は、今の自分が「真夜中に酔った状態で帰り道を歩いている独り身の女性」という事実に気付き、急速に背筋が寒くなった。
こんな状態で襲われれば、逃げるのはまず不可能である。
というか、数時間前には性格がサイアクなクズ男に一方的にフラレたというのに、その上帰り道に不審者に襲われたとなったら、「不幸のバリューパック」もいいトコロではないか。
何事もありませんように、と願いながら、絢音が歩調を早めて歩き進んでいると、右手にある公園の入口で仄白い物体が横たわっているのが、絢音の視界に飛び込んできた。
抱き枕か何かかな、と最初絢音は思った。
しかし、それは抱き枕ではなかった。
ボサボサに乱れた、髪の毛。
傷だらけの身体、靴下も脱がされトランクスのみという格好。
生きているのか死んでいるのか分からない状態のその少年は、うつろな視線をただ傍らを通りすぎようとしている絢音に対して向けていた。
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