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おそらくだが、今、目にしている状況から察するに、どうやらこの少年は暴行を加えられた後、公園の入口に投げ捨てられたようであった。
「事件じゃん、これ……」
絢音は顔を引きつかせながら、言葉を洩らした。
この少年は、果たして生きているのか死んでいるのか。
生きていれば、まだ絢音としてもこの少年にしても救いはあるが、死んでいるとなれば、色んな意味で面倒な事になる。
絢音は「死体の第一発見者」として警察への通報を余儀なくされ、失恋のショックとアルコールで酩酊した思考力で、警察への事情聴取に臨まなくてはいけない。
もっとも、ついさっきまで行きつけのダイニングバーで飲んでいたという事もあり、アリバイはあるのだが、今のこの泥酔した状態でお巡りさんに対して自分の潔白をきちんと証明出来るのか、絢音は徐々に不安を覚えてきた。
「生きててくんないかな……」
未だ倒れこんだままでいる少年の顔を見つめながら、絢音は再び独り言を洩らした。
よく見てみると、この少年。
なかなかに、可愛い顔立ちをしている。
年の頃は、10代半ばといったトコロか。
背格好も163センチの絢音とさほど変わらず、雰囲気的にちょっと母性本能をくすぐるモノがあった。
一体、どういう理由で少年が暴行を加えられ、裸の状態で投げ捨てられたのかは分からないが、もし生きているのなら……。
「いや、ダメでしょ」
脳内をよぎっていった、変な妄想を振り払う為、絢音は二度三度とかぶりを振る。
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