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●2. やっちまった
朝の10時に目を覚まし、ダイニングキッチンで来客用の毛布にくるまった状態で寝ている少年の姿を確認すると、絢音は頭をかかえた。
──酔った勢いとはいえ、とんでもない事をしてしまった。
出来る事なら、夢だと思いたかった。
しかし、昨晩少年を連れ帰った現実を証明するかのように、絢音の網膜には少年の姿がバッチリと映り込んでいた。
深いため息を絢音は一つつくと、目を閉じたままでいる少年に歩み寄り、鼻と口付近に掌を近付ける事で、少年の呼吸の有無を確認する。
絢音の掌には、生暖かい少年の息遣いがほのかに当たっていた。
「取り敢えず、死んでなくて良かった……」
絢音は安堵の息をつくと、冷蔵庫から牛乳を取り出し、グラスに注いだそれを酔いざましとして一口飲む。
「さて、これからどうしようかね……」
牛乳を飲みきったグラスを、ひとまず水洗いをした状態でシンクに置くと、絢音は少年を見据えながらポツリと独りごちた。
スタンダードに行くのなら、警察に「昨日、裸の少年が公園の入口付近にいたので保護した」と、通報すべきだろう。
が、そうすると、警察から「何故、その場ですぐに通報しなかったのですか?」と、突っ込んだ質問をされるのは明白であり、せっかくの休日を警察とのそういうやり取りで潰すのはどうにも億劫だな、と絢音は思った。
かといって、このまま少年を匿うのも限界があるし、もしこの少年が粗暴な性格だとしたのなら、絢音の身に危険が及ぶ可能性がある。
「そういえばこの子、昨日アタシの顔を見て『おなかすいた』って訴えかけていたな……」
ふと、昨晩の記憶が蘇った絢音は、貯蔵庫代わりにしている食器棚の下の引き出しを開けると、そこに何かしらめぼしい食べ物が無いか、アクビをしながら探していく。
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