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「えっ、あっ、起きた?」
身体を起こし、キョロキョロと辺りを見回す少年に対して、絢音は早口で事の経緯を説明していった。
「あっ、えーとね。
君さ、昨日そこの公園の入口で傷だらけで倒れていたのね。
で、見ていて危ないなって思って、保護させてもらったんだけど、勝手な事してゴメンね。
でも、見た感じホント危ないって思ったんだよ。
だって、ケガしまくってるし、何でか知らないけど、裸だったし」
あどけない顔で無垢な視線を向けてくる少年に対して、絢音は「大人」として冷静に説明したいと思うのだが、ついしどろもどろになってしまう。
「あぁ……」
少年は絢音から視線を外すと、納得した表情を浮かばせた。
「知ってる」
そして、毛布の上で組んだ両手をボンヤリといった状態で見つめながら、少年は言葉を付け添える。
「だよねー。
君、昨日アタシの方を見て、『おなかすいた』って、何回も言ってたもんね。
目とか、うつろだったから覚えてないかな、って思ったけど、やっぱ覚えてたか」
「それも覚えてるし、お姉さんが呼吸を乱して、必死で俺を担いでマンションまで運んでくれてたのを何となく覚えてるよ。
その時、めちゃくちゃニンニク臭かったから」
少年は八重歯を見せながら、無邪気な様子で再び絢音に視線を向ける。
「あっ……」
昨晩、ガーリックのペペロンチーノを食べた事を思い出した絢音は、思わず口元を右手で押さえた。
「お姉さん、ホントありがと」
少年はニンマリと笑うと、ダイニングチェアに座ったままでいる絢音に向かって深々と頭を下げた。
「何か、知らない間にTシャツまで着させてもらってるし」
そして、身にまとった黒いツアーTシャツの裾を両手に持つと、少年はそれを新しいオモチャでもあてがってもらったように、マジマジと見つめ続けた。
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