●2. やっちまった

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「あっ、それね。 さすがに上半身裸のままの状態はどうかな、と思って、取り敢えず着させたの。 君とアタシ、体格ほぼ一緒くらいだし、そのツアTも、ちょうどもういいかなって思ってたから」 「へー」 「あのさ、君。 なんで、あんな傷だらけの状態で公園で倒れていたの? 服も、トランクス以外全部脱がされてたし」 取り敢えず、少年と会話をしても問題無い、と判断した絢音は、胸中に秘めていた質問を単刀直入に切り出してみた。 質問を切り出された途端、少年のその表情から無邪気さが消えた。 そして、電池の切れたロボットのようにうつむき、少年はそのまま黙り込んでしまう。 「えーと、ゴメン。 やっぱ、そんな深刻な話だった?」 アザが浮かんだままでいる少年の横顔を見つめながら、焦った絢音はワカメスープを食べていたスプーンを幾度も触った。 「いや、話せない事は無いんだけど……」 少年はうつむいたまま、消え入るような声で言葉を返す。 「でも、それを話すには条件がある」 「じょ、条件?」 目の前の少年が「年頃の男の子」だという事を思い出した絢音は、貞操の危機を感じ、反射的に身を翻した。 「あの……」 顔を上げ、少年は再び絢音に目をやると、重々しい口調で切り出す。 「あの、何かごはん食べさせてくんない?」 「へっ?」 「いや、あのさ……」 少年は照れ臭そうに鼻の頭を人差し指でかくと、続けて言った。 「お姉さんが食べてる、そのワカメスープの匂いで、俺、物凄く腹が減ってきたんだよね。 つーか、この一昨日くらいから殆ど食べてないから、何かあったら食べさせて欲しいんだ。 こんな風に助けてもらって、さらにワガママ言うのは悪いと思ってるんだけど」 「あっ、全然いいよそんなの! そういや、昨日助けた時も君、ずっと『おなかすいた』って言ってたしね」 拍子抜けした絢音は立ち上がると、先程見つけた「カップヌードル シーフード」のフタを開け、そこに沸かし直したお湯を注いでいった。
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