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「どうしたの」
僕は彼女の頭にぽんと手を置くと、地面をじっと見つめている彼女の隣に座り込んだ。
「見てください。かわいい花が咲いてます。」
彼女は、隣の僕を見て、にこにこと笑った。
僕は彼女の前に咲いている花を見た。
その花は河原の橋の下の陰になっているところに、たくさん咲いていた。
天に向かって凛と伸びている緑色の茎とは対照的に、白い花弁は地面に向かってひっそりと開いていて、とても綺麗だった。
「なんだろうね。この花」
「後で調べましょう。わたしの家に植物図鑑があるので」
彼女は、そう言って河原に腰を下ろすと、背負っていたリュックサックからスケッチブックと鉛筆を取り出して、花の写生をし始めた。
僕も、自分のスケッチブックを出して、真剣にスケッチをしている彼女の横顔を見ながら、鉛筆を走らせた。
「できました。せんぱいも描けましたか?」
少し時間が経って、彼女は満足そうに自分のスケッチブックを眺めると、僕のスケッチブックを覗き込んだ。
「ごめん。雪のこと描いてた。」
「もーせんぱい!!花を描いてくださいよ!」
彼女は、顔を赤くして、僕のことをスケッチブックでパシパシと叩いた。
僕は笑いながら、スケッチブックを閉じた。
毎日起きるちょっとしたことが、君のくるくると変わる表情を見てるだけで、最高に幸せだった。
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