スノードロップ症候群

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彼女の様子が突然おかしくなったのは、それから数日後だった。 「先輩、頭が痛いので、今日は大学お休みします」 彼女とは別々の部屋を借りて住んでいるが、寮の部屋番号も近いため、付き合ってからはどちらかの家に転がり込んでいることがほとんどだった。 今日は彼女が僕の家に来ていたので、授業時間の前に起こしてあげると、彼女は苦しそうな表情で布団をかぶり直した。 「心配だから、僕も授業休むよ」 「私は大丈夫なので、先輩は授業行ってください。単位落としちゃいますからね」 「ほんとに大丈夫?」 「はい。お留守番は任せてください」 彼女は弱々しく微笑むと、すっと目を閉じた。 とても心配だったが、迷った末、おかゆを作って、「起きたら食べてね」というメモを残し、僕は大学に向かった。 大学では彼女と一緒にとっている一般教養の美術の授業もあったので、代わりにノートを取った。 最近気温の寒暖差も激しく、それで風邪をひいてしまったのだろう。 僕は、授業が終わると、スーパーに行き、風邪薬と彼女が好きなプリンをいくつか買って足早に家に帰った。 「ただいま」 僕は、マフラーを取って、薄暗い部屋の明かりをつけた。 「雪、大丈夫?雪が好きなプリン買ってきたよ。」 僕はそう言って、プリンをビニール袋から取り出して、彼女が寝ているベッドに近付いた。 彼女からは返事がなかった。ベッドで目を閉じて、まるで置物のように動かなかった。 熱があるのかもしれない。 僕は、彼女の額にそっと手をやったが、すぐにぱっと手を離した。 彼女は、信じられないくらい冷たかった。 氷に触っているかのような、鋭い痛みが僕の指に走った。 彼女の身に何が起こっているのか分からなかった。 頬を触ったが、体も人間の皮膚の柔らかさはなく、石のように硬かった。 僕は、急いで近くの病院に電話した。症状を説明し、助けを求めると、救急車を出してくれることになった。 僕は、石のように硬くなった彼女の手をずっと握っていた。 これは何の病気なのだろうか。 きちんと治るのだろうか。 不安で押しつぶされそうだった。
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