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 僕が操縦するのはお金持ちの人の家で持っている小さな飛行機です。忙しい旦那様の翼になるのが僕の仕事です。  目的地に着くと帰る時間まで自由時間をもらっているので、街をぶらぶらとして過ごしています。  今日は賑わう噴水の傍に紙飛行機を置いて、写真を撮りました。「イタリアに来たよ」という文と一緒に、写真を従兄に送ります。  従兄は、兄ちゃんはもう飛行機の操縦ができません。けれど彼と一緒に空を飛びたくて、僕が考えたのは写真を送ることでした。従兄の作った紙飛行機が旅する景色を写真に収めれば、旅をした気分を、空を飛んで行った気分を少しは味わえるのではないか、そう思ったのです。  電話が鳴ったので通知を開くと、従兄から写真が送られてきました。 『今年も花壇に風船が咲いたよ』  僕が日本に置いて来たフクロウの人形と一緒に、フウセンカズラが映っています。 『次はどこへ連れて行ってくれるんだい?』
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